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永遠がこっちに居るまでの間くらい毎日一緒に居たくて、放課後に俺の家に誘い、いつも通りの時間を過ごしていた。


「永遠転校先もう決めたん?」

「うん、先生がいろいろ調べてくれて新しい家から通いやすいとこにしたわ。」


俺の部屋のベッドに凭れかかり、パクパクとスナック菓子を食べながらスマホを見ていた永遠に問いかけると、そんな返事が返ってくる。


「ふぅん。せっかく高校受験頑張ったのにな。」

「ほんまやなぁ。学校のレベルはどうしても下がるんやって。しゃあないなぁ。」


どうすることもできない親の都合による転校をもう受け入れている永遠は、やるせない表情を浮かべながらそうぼやいていた。


「あ〜あ嫌やなぁ。もう俺の家住みぃや。」

「なんでやねん。」

「大学はこっち戻ってくる?」

「ううん、多分もう戻ってこーへんと思う。」

「えぇ…嫌や。京大受ける言うてたやん。」

「それは冗談や。」

「永遠なら行けるって。」

「はぁ〜?この前まで無理無理言うてきたくせに!」


永遠は俺の発言に笑いながら振り向き、ベッドに寝転がっていた俺の頭をペシッと軽く叩いてきた。


「だってぇ…。永遠と一緒に居たいんやもん…。」


枕に突っ伏しながら俺はそう言うと、自分の発言により涙が出てきそうになってしまった。ズズッと鼻を啜ったら、「郁馬また泣いてるん?」って永遠は俺を見て笑ってくる。


「も〜そんな泣かんでええやん。一生の別れちゃうねんから。」


永遠はそう言いながら、俺の髪をぐしゃぐしゃと撫でてきた。そんな永遠の行動で俺の中にあったスイッチが入ってしまったかのように、俺は永遠に向かって飛び付き、永遠に抱きつきながらわんわん泣いた。


「うわ、びっくりした。郁馬重。」

「小学生の頃からずっと一緒におったのにぃ…!」

「泣きすぎやって。そんな泣くのは俺が死んだ時にして。」

「嫌やぁ…!死ぬなよ…!」

「いや死なへんけど。」


初めて永遠を真っ正面からぎゅっと力いっぱい抱きしめたら、もう離したくなくなってしまった。

けれど永遠は、ズズッと鼻を啜った俺に「おい、鼻水付けんなよ!?」って身体を押し返される。

「はい」って、近くにあったティッシュの箱を永遠に渡されてしまい、仕方なくブーッと鼻をかむ。


「休みになったら絶対会いに行くし、郁馬も俺んとこ来てな。」

「…うん、絶対行く…。」


転校する永遠よりも俺の方がわんわん泣いていたから、永遠はそんな俺を見て笑いっぱなしだった。俺はそんな永遠の笑顔を見たらまた寂しくなってきてしまい、何度も何度も泣きたくなった。



そして4月。高校2年に進級すると、俺の隣にはいつも一緒に登校していた親友はもう居ない。

寂しくて寂しくて、永遠の笑顔が見たくて、永遠の声が聞きたくて、薄々気づき始めていたけど、俺の永遠への気持ちが恋だったことを自覚した。


なのに自覚した時にはもう俺の隣には居ない片想いの相手のことを思い出しては、やるせない気持ちになり、つまらない学校生活に嫌気が差してくる。


永遠は新しい学校でどんな高校生活を送っているのだろう。男子高だって言ってたから、人懐っこくて可愛い永遠は転校先の学校でチヤホヤされているかもしれない。

…俺より仲良いやつができないといいな。

ずっと俺が、永遠の一番の親友で居たい。


俺のスマホの中に山ほどある永遠の写真を毎日眺めながら、永遠のことを考える。


【 永遠友達できた? 】

【 うん、一人だけ 】


一人だけ?意外やな。永遠の周りにはもっと人がいっぱい寄ってくると思ってた。転校するのは初めてのことだから、まだ遠慮気味な態度なのかな。

そんなことを考えながらも、密かにホッとしている自分がいる。永遠には俺っていう一番仲が良い友達が居るから、他に仲良いやつなんてできなくていい。


【 寂しくなったらいつでも帰って来てな 】

【 うん、また会いに行くわ。今のところその友達のおかげでなんとかやっていけそう。】

【 おお、よかったやん 】


その永遠の新しい友達に俺は少し嫉妬するものの、一人くらいならしょうがない。そう思っていた時だった。


ピコン、と永遠から返事が来て、届いたメッセージを見た瞬間、メラメラと嫉妬の炎が心に宿る。


【 新しい友達バチクソかっこいいねん、惚れた。】


続けて送られてきた猫のスタンプには、猫の周りに大量のハートが散らばっている。


「…は?冗談やろ?」


冗談で言っているって分かってるのに嫉妬心が強すぎて、顔も知らない永遠の新しい友達を俺はおもいっきり妬んだ。


【 俺かそいつどっちが好き? 】

【 なんやそれ笑 】


俺って言えよ!!!即答しろや!!!

俺ら何年の付き合いやねん!!!!!


冗談でも『郁馬』って返して欲しくて聞いたのに、その後永遠から送られてきたラインは【 光星 】だった。

は?光星??


「誰やねん!!!!!」


キ〜ッ!!!と怒り狂った俺は、ベッドの上にスマホをぶん投げ、暫くの間不貞腐れてスマホを放置した。


永遠、頼むからもっと寂しがってくれ。

早く郁馬に会いたいって言うて、早く会いに来てくれ。って望んでるのに、寂しがってるのも会いたがってるのも俺ばっかりで、俺の悲しい片想いは続くのだった。


親友との別れと、悲恋 おわり

2022.05.31〜07.03
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