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「拓也、さっさとそいつ帰らせてくんね?」


ナースの卵ちゃんがりとにグイグイ話しかけているのを見た先輩が、コソッと横から俺にそう話しかけてきた。あんたイケメンで可愛い子釣って用無しになったら帰らせるのかよ。


「いや、俺もあいつと帰りますよ。あいつビール飲んだんで帰りにやらかされたら困るし。」

「はっ?二次会は!?拓也いねえとみんな帰っちゃうだろ!」

「俺をダシにしても先輩のためにはなんないと思いますけど。」


そう言うと先輩はむすっと膨れっ面になってしまった。そもそも先輩は毎回俺や矢田を合コンに誘うけど自分が全然相手にされてないことには気付かないのだろうか?


「ね〜拓也くんってば〜!」

「あ、ごめんなんだっけ。」


先輩と話している時名前を呼ばれて、そこで先輩との会話が途切れる。俺の隣ではサーモンのお造りを指差し、「食わねえの?」とナースの卵ちゃんに聞いているりと。


「うん、りとくん食べていいよー。」

「うぃ〜。」


こんな場面でも我を貫きすぎているりとをにこにこと見つめているナースの卵ちゃん。自由奔放な性格が却って女性心を掴んでいるのだろうか。それともりとが年下だから可愛いのかもしれない。

結局先輩は、こんな空気に耐え切れず、今テーブルにあるご飯を食べ終わると早々にこの会をお開きにして、まったく話せなかったナースの卵ちゃんにコソッと声をかけた。


「なぁなぁ、俺らあんまり喋れなかったしこのあと二人で二次会でもしない?」


しかしりとの方をチラチラと見ているナースの卵ちゃんに、「あ…ごめんなさい。」と断られている。


りとはと言えば、眠そうにくわっと大きな欠伸をして、「拓也早く帰ろうぜ。」と俺を急かしてきた。


「くそッ…!矢田に次会ったら文句言ってやるからな!」


先輩はなかなかにご立腹の様子だったが、矢田からしてみれば『それは残念でしたね。』くらいにしか思わないだろう。合コンクラッシャーな兄弟を、先輩はもう二度と誘わなければ良いだけの話だ。



「りと、合コンどうだった?」

「ビールってガチ美味いよな。」

「あっ!お前なぁ、いつからビール飲んでたんだよ?初めての感じには見えなかったぞ。」

「とあるビールの伝道師がいてな。」

「…はあ???」


意味不明なことを言っているりとは、その後帰宅中はずっと「あ〜早く成人したい。」とか「居酒屋の飯美味いな」とかそんなことばかり言っていた。


こいつは気を付けないと、酒飲み街道まっしぐらだ。

これは絶対に矢田に報告しなければいけないな。


空気読めないクソ男2 おわり

2021.04.21〜2021.06.29
拍手ありがとうございました!

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