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「宇野会長〜!顧問にこれどうにかしろってさっき廊下で渡されました…どうしましょう?」


放課後、生徒会の後輩ミッキーが、胸に何かの箱を抱えて生徒会室に現れた。


「ん?なんだそれ。」

「目安箱みたいです。中に紙ぎっしり詰まってますよ?」

「はぁ?まじで?そんな箱どこに置いてあったんだよ、初耳だぞ。」


ミッキーからその箱を受け取り中を覗き込むと、中にはまじで紙が大量に詰まっている。こんな箱が学校に置かれていたなんて知らなかった。


箱の中に手を突っ込んで1枚取り出し、紙に書かれた内容を確認してみると、【 宇野会長はヤンキーなんですか? 】と書かれている。


「は!?なんだこの失礼な目安箱は!!!」


1枚目からいきなり不愉快な内容を目にしてしまいびりびりびり、とその紙を破り捨てていると、紙パックのカフェオレを飲みながら生徒会室に入ってきた絢斗が目安箱の存在に気付き近付いてきた。


ソファーに腰掛け、カフェオレをストローで啜りながら、ひょいと箱の中から1枚紙を取り出した絢斗が文字を読み上げる。


「【 生徒会ってちゃんと仕事やってます? 】はは、やってませーん。」


笑い声を上げながらポイッと紙を投げ捨てた絢斗は、またカフェオレのストローを咥える。自由奔放すぎる絢斗を横目で見ているミッキーの顔が引き攣っている。


「絢斗、これどうする?」

「会長だろ〜?お前が考えろよ。」

「ん?目安箱っすか?今度の生徒総会で使えば良いんじゃないすか?」

「おお、それだ。」


最後に生徒会室に現れた後輩、豪の発言により、俺たちが今何をすべきかの方向が一瞬で決まってくれた。頼もしい後輩が居てくれて良かった。


「生徒総会か…。そういや顧問に準備しとけって言われてたな。」

「来週の月曜だっけ?」

「…宇野会長大丈夫ですか?かなり日にち迫ってますけど…。」

「正直、生徒総会って学校に意見ある奴が発言する場だと思って深く考えてなかったわ。」


今度は俺の発言に、不安そうな表情を浮かべるミッキー。悪いが俺は歴代の会長のように優秀じゃねえから生徒総会とか言われてもなにをすれば良いかさっぱりだ。こりゃ生徒から不満持たれてもしゃあねえな。


「つまりその意見ってのがこの目安箱には入ってるわけだろ?じゃあこれその場で読み上げて返答してりゃ時間すぐ過ぎるんじゃね?去年古澤会長も目安箱の内容まとめて発表してたし。」

「よし、じゃあそれでいこう。」


ズゴゴゴゴ、とカフェオレの中身を飲み切った絢斗は、その後に面白いことでも思いついたようににやりと楽しそうな笑みを浮かべた。


「パス3回まで。返答詰まった奴が負けな。」

「は?」

「紙に書かれた内容は当日のお楽しみ〜。」


そう言って、この話は終わりだというようにソファーに寝っ転がった絢斗が、スマホで動画を見始めた。


「えっ!?春川先輩!目安箱の内容当日まで見ないんですか!?」

「時間の無駄無駄。効率良く捌こうぜ。」


不安たっぷりの表情でチラリと俺に視線を向けてきたミッキーには、あとでこそっと絢斗には内緒で、目安箱の中身の確認を許可した。


そして、絢斗と俺が生徒会室を出た後、ミッキーと豪はコソコソと2人で目安箱の中を覗いていた。


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