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ゆで卵をかじりながらテレビを見ていたりとくんは、次第にうとうとしはじめた。カクッと動く頭を見て、俺はりとくんに呼びかける。


「おーいりとくん寝るなー。寝るなら家帰れー。」

「ん〜…。」

「あ、寝やがった。」


チラリと掛け時計に目を向けると、時刻は22時前だった。テレビ画面にはバラエティー番組のエンディングが流れ始めたところで俺は流し前に立ち食器を洗う。

ジャーと水が流れる音でかき消されて気付かなかったけど、「ただいまー」という声が聞こえてるいが帰ってきていたことに気付いた。


「おー、おかえり。あれ?雄飛じゃん。」

「お邪魔しまーす。矢田先輩に居酒屋で偶然ばったり会いまして。」


るいの声に振り返れば、コンビニ袋を手にぶら下げた雄飛の姿まであった。


「うわっ、りとまた来てんのかよ。グースカ寝やがって。そろそろ食費代も払ってもらうか。」


りとくんの姿に気付いたお兄ちゃんは、そう文句を言いながらりとくんの尻を蹴っている。


「うはは、りと来てんすか?この前りとん家行きましたけど冷蔵庫の中空っぽでしたよ。」


雄飛までそんなことを話しながら、りとくんの尻を蹴り始めた。


「んぅ…いってぇ…。」


寝返りを打ち、チラリと見える腹をりとくんはぽりぽりと掻いている。そんな呑気な弟の姿にるいはカチンときてしまったようで、「起きろこらぁあ!!!」とりとくんの耳元で頭をしばきながら叫んだ。


「ぐぇ…痛、びびった…、兄貴か。」

「お前いい加減にしねえと出禁にするぞ。」

「くぁ〜っ」


眠そうに大欠伸をしたりとくんに、お兄ちゃんは呆れた目を向け、諦めたようにりとくんに背を向けた。


「矢田先輩どれ飲みます?俺これもらっていいすか?」

「あぁ、どれでもいいよ。」

「やった〜、ごちっす。」


どうやら雄飛が手に持つビニール袋に入ったものはるいが買ったものらしく、ありがたそうに雄飛はお酒を飲み始めた。

そんな会話を耳にしたりとくんが、まるで今までグースカ眠っていたやつとは思えないくらい素早い動きで雄飛の元へ歩み寄った。


「あっずるい!俺も!」


ガサガサとビニール袋の中を漁り始めたりとくんに、お兄ちゃんは呆れ顔だ。


「ハイボールもーらい。」

「お前それ飲んだら家帰れよ。」


るいの話を聞いているのかいないのか、プルタブを開けたりとくんは、さっそくぐびぐびとハイボールを飲み始めた。


お前それで今日3本目の酒だな。
俺はもう知らねーよ?注意はしたから。


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