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昨年学内で行われたミスターコンテストの優勝者、黒瀬 拓也には、現在彼女は居ないらしい。

3年連覇なるかと言われていた前年度の優勝者を跳ね除けて、見事優勝に輝いた。

そんな黒瀬 拓也を、狙っているものは多かった。



「拓也くん今日夜ご飯行かない?」

「あー残念、俺今日バイト。また今度行こうぜ。」

「うん!絶対ね!」


女の子の誘いは基本的には断らない。

だから、彼に積極的な子が多い。


「いいよなー拓也は。女に困らなくて。」

「あれ?お前彼女居なかったっけ?」

「一週間で振られたんだよっ!!!クソぉ!誰か美人な子俺に紹介しろよ!!!」

「どの子がいい?セッティングしてやるよ。」

「拓也ぁ!!!愛してる!!!まなみちゃんでよろしく。」


キリッとした表情で女の子の名前を口にした友人に、拓也は「了解。」と親指を立てた。

拓也っ!!!お前かっこよすぎるぜ!

と、男友達にも人望が厚い黒瀬 拓也は、「まなみ、ちょっとおいでー。」と友人が狙う女の子を手招きする。


拓也に呼ばれた女の子は、期待感たっぷりに拓也の元へ歩み寄るが、


「今日俺のバイト先のレストランで食べに来ねえ?新メニューの感想聞きたいんだよ。」


その言葉の裏に隠された意図など知りもせず、彼女は嬉しそうに頷いた。



「拓也くんってどんなにアピっても全然靡いてくれる感じしないよね。なんか女の子みんなに優しいしさー、そろそろ限界なんだけど。」

「わかるー。期待するだけ無駄、みたいな?」

「やっぱさー、実は隠してるけど本命の彼女とかいるんじゃないの?」


あまりにモテすぎで、嫉妬からの陰口を言われることも無きにしも非ず。


「って言われてるけどぶっちゃけどうなんだよ?」

「ぁあ?本命の彼女?んなのいねーよ。」

「って言ってるけど実は隠してるとか、」

「何故に隠す必要がある。俺は堂々とイチャつきたいタイプだ。」


男友達に問いかけられた質問に、はっきりそう答えた拓也のその言葉は、嘘偽りのない拓也の本心だ。


「ってあいつ言ってたから多分彼女は居ないと思う。」


男友達は拓也の口から聞いた言葉を、女の子に報告する。


こうして女の子たちは、本命はいないという言葉を信じて、今日も元気に黒瀬 拓也に猛烈なアプローチを繰り広げるのだった。


「…前の恋がまだ若干引きずってんのかなー…彼女とか作る気なんねえわ…。」

「ん?拓也なんか言った?」

「いいや?なんにも。」


黒瀬 拓也にとって、どんな可愛い子にアプローチされても、以前好きだった子の今でも脳内に強く焼き付いている強烈な印象に、敵うものは居なかった。


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