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可愛い可愛い私の息子、次男の航は、親バカな意見を抜きに見てもなかなかにイイ男に育ったなと思っている。
そして、そのうち可愛い子と結婚し、孫ができたならば、その孫はそれはもう可愛いくて仕方ないだろうな、と思っていた。
が、私は航の子供…つまり孫の顔を想像するのはやめた。
私が孫を期待するということは、航の母親である私が、航の好きな人…つまりるいきゅんとの関係を望んでいないことと同じ意味だから。
礼儀正しく、頭も良くて、良い子なるいきゅん。そしてなによりとびっきりのイケメン!こちらからお付き合いをお願いしたいくらいの男の子。
そんなるいきゅんと航の関係を仮に望まないとすれば、その理由はひとつだけ。
二人が“同性”だということ。
たったそれだけの理由。
けれど、それだけで十分な理由であるのも確か。
偏見が無いと言えば嘘になる。
恋愛は男女でするのが一般的。
でも、航とるいきゅんを見ていると考えが変わった。
息子が幸せそうなら、それでいい。
いや、寧ろ航の相手がるいきゅんなら十分すぎるくらいじゃないか。…と、私はるいきゅんと会うたびに思うようになった。
例えば、いくら可愛くて礼儀正しい良い子な女の子が息子の彼女だとしても、母親である私も一人の女であるため、息子の彼女に対して少しは“嫉妬”のような感情を抱いてしまうのだ。
しかし、航の恋人がるいきゅんとなればどうだろう。
『ゆりさん、ケーキ買ってきたのでどうぞ。あ、俺コーヒー入れますね。ゆりさん座っててください。』
…あぁ、…最高です。
若くてイケメンな子にこんな態度を取られたら、あらやだ。うっかりときめいてしまうじゃない!なーんてね。
るいきゅんは驚くほどに気配りが上手だ。
いや、るいきゅんは、“航の母親である私だから”、ここまでの気配りをしてくれる。
私が理想とする息子の嫁像が、まさにそこにあった。
『ゆりさん、今度航連れて家に帰りますね。』
『ゆりさんの作るお菓子とても美味しいです。』
『ゆりさん、これ手土産に持ってきましたのであとで召し上がってください。』
『ゆりさん』
『ゆりさん』
『ゆりさん』
……そんな気配り上手なるいきゅんのことを、私はいつの間にか可愛くて可愛くて仕方なくなってしまった。
それはもう、自分の息子のように………。
るいきゅんはすでに私にとって、身内のような存在になっていた。
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