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「おいりと!お前に好きな人いるとか聞いたことねえぞっ!!!」


同じクラスのイケメンモテ男、矢田 りと。

2年でりとと同じクラスになり、一緒に連むようになり、3年でも一緒になって、何気に矢田 りとの友人ポジションとして目立っている俺の高校生活。


りとと仲が良いからか、女友達は多い。

俺は話しやすいのか、よくりとのことを聞かれる。

例えば、好きな人。

あと、彼女はいないのか、とか。

俺の知っている限りでは、特別りとが意識しているような女子はいないと思う。

だからいつも『いないと思う。』と答えていた。


しかしどうしたことか。

りとには好きな人がいるらしい。

それも、本人の口から直接聞いたとか。


「誰なんだよお前の好きなやつ!」


そう問いかけると、りとは「さあ?」と言うだけで、全然教えてくれそうになかった。


「好きなら好きでさっさと告白しちまえよ!」


そうしたら、りとを好きな奴はりとを諦めるだろ。…俺が好きなあの子だって…


「………告白ねぇ。」

「お前ならどうせオッケーに決まってんだろ。」


さっさと告白してりとに彼女ができれば良い。と思って俺が言った言葉に、りとは少し俯き気味で黙り込んだ。


ちょっと面白くなさそうに唇を尖らせている。なんなんだろう、この反応…


「…りと?」と顔を覗き込むと、りとは「はぁ…。」とため息を吐いた。


「え、なになに。なんのため息。」


ため息を吐いたっきり、なんの反応もしなくなったりとは、徐にポケットからスマホを取り出し、特になにか目的があったわけでもなさそうに、スマホをいじりはじめる。


「……会いたいな。」


そして、スマホをいじっているりとから、微かに聞こえた呟きに、俺は耳を疑った。


“『会いたい』”…?


今こいつ『会いたい』っつったか?


「………誰に?」


気になってしまうのは当然で、聞き返せばりとは目をパチリと開けて、何故か驚いたような表情をして俺を見た。


「………え、今の無意識?」


まさか無意識の呟き?


もう一言問いかければ、りとは頬を少し赤らめて、前髪を額に撫でつけ、目元を隠した。


こんなりとを見るのは初めてで、とても驚いた。


りとに“好きな人がいる”というのは、どうやらほんとうらしい。


“会いたい”…ってことは、もしかしたらりとの好きな人は、この学校の人ではない…?


「お前の好きな人、他校生?」


そうと分かれば、女子にさっさとこの最新情報を広めたい。


「ちょっまじ、それだけ教えろよ!」


必死でりとに問いかければ、りとは少しうざったそうにしながらも、「…うん。」と頷いたのだった。


まじか!よっしゃ!

朗報!朗報!


「りとの好きな人他校生だって!」


まずはこの喜びを、男同士で分かち合った。


「え、まじ?」

「うん!本人がそう言った!広めていいぞ!」

「よっしゃ、広めろ広めろ!」


こうして、矢田 りとの好きな人が他校生だと知り、密かにりとに片想いしていた女子たちはショックを受けたとか。

…俺の好きなあの子も…。


そこで俺があの子を慰め、あの子をゲット!

…という作戦を立て始めたのだった。


さてさて、これから俺の恋物語のスタートだ!

2016/05/30〜08/11
拍手ありがとうございました!


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