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夕飯を食べ終えて冬真と咲田と食堂を出た時、咲田のことを待ち伏せしていたらしい生徒が咲田のことを呼び止めた。
「あっ!咲田くん!ちょっといい?」
「はい?」
呼び止められ、咲田が振り返ると、今度は俺たちのことを気にするようにその生徒はチラチラと視線を向けてきた。
俺は冬真と目配せして、告白だったら邪魔してはいけないと思って咲田から少し距離を取る。
「おい、結局まだ付き合ってねえのかよ。」
コソッと冬真にそう聞かれ、ペシンと冬真の頭をぶっ叩いた。だからお前は話が飛躍しすぎなんだって。
「いってえな。お前ら見てて痒いっつってんだろーが。」
「は?知らねーわボケ。」
不満そうな顔で頭を撫でている冬真に言い返した直後のことだった。
「はあ!?なにそれやめて!?俺そんなことしてねえから!!」
珍しく咲田が相手を怒鳴りつけている声が聞こえてきて、俺と冬真は同時に振り向いた。
「えー…なんだ、やっぱ嘘かよー。」
咲田に話しかけていた相手は、やたら残念そうな表情を浮かべている。なにが嘘だって?
俺と冬真は咲田の珍しすぎる態度が気になり咲田の元へ歩み寄ると、咲田は顔を真っ赤にして手をぎゅっ強く握り、震わせていた。
「咲田?どうした?」
普通じゃない咲田の様子に問いかけるが、咲田からの返事は無く、会話の相手に視線を向けると、男はヘラヘラしながら軽いノリで言うように口を開いた。
「あ〜なんか咲田くんに頼んだらすぐヤらせてもらえるって話聞いて〜。」
「…は?」
「早見くん違うから!!!俺そんなこと絶対してないから!!!」
男の発言に必死で否定する咲田。いや分かるって、そんな必死に訴えてこなくてもそんな話が嘘ってことくらい。
「それ誰から聞いたんだよ?」
問題はそんな嘘を誰から聞いたんだってところで、男に問いかけるとあっさり犯人を教えてくれた。
そして俺と冬真は同時に「はぁ〜。」とでっかいため息を吐く。
怒り通り越して呆れだな。
よっぽど咲田への妬みが強いらしい。
小池の名前を教えてくれた男には「それあいつの嘘だから。」と言うと残念そうにしながらも納得したように帰っていった。
あの男、咲田とまじでヤれると思ったのか?それはそれできもちわりぃぞ。
「咲田くんも面倒なやつに敵視されたよな…。」
憐れむような目を咲田に向けてそう口にする冬真にも咲田は無反応のまま拳を震わせていた。
咲田は怒って当然だけど、こんな怒りで手を震わせている咲田はできれば見たくない。
ついさっきまで恥ずかしそうに俺を見てモジモジしていた咲田を取り戻したいと思った。
咄嗟に俺は、怒りで震えている咲田の拳の上から手を重ねる。すると、驚いた顔をして俺を見上げてくる咲田。
冬真には話が飛躍しすぎ、なんて思ったけど、もうこうなったらいっそ飛躍してやるか。って気持ちで俺は咲田に問いかけた。
「咲田、俺と付き合ってみるか?」
咲田は状況が飲み込めないようにポカンと口を開けて俺のことをジッと見つめた。
そして冬真は、ニヤニヤした顔を隠すように、無言でバッと口に手を当てた。
お前はもうどっか行って。
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