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「どうするんだよ想!!」

「は?どうするって?なにが?」

「咲田くんだよ!付き合っちゃえば!?」


昼休みが終わる10分ほど前に咲田は自分の教室に戻り、その直後に冬真がコソッと俺にそんなことを言ってきた。


「俺まだ何も言われてねえぞ。」

「でもあれどうみても想のこと好きだろ!」


ああ…やっぱりお前もそう思う?さっき俺が思ったことは、どうやら俺の自意識過剰ってわけでも無さそうだ。

とは言え、まだ告白されたわけでもないのにこの会話は気が早すぎる。もし違った時がクソ恥ずいな。


「お前だって可愛いと思ってるんだろ!?咲田くんのこと!!」

「それお前じゃね?」

「はあ!?さっき想が自分で言ってただろ!綺麗で可愛くて性格も良いってべた褒めしてただろーが!!」

「…ああ、それはまあ、言ったな。」

「お前知らねえだろ、あの時咲田くん超可愛い顔して想の話全部聞いてたんだからな!?」

「え?…ああ、そう。」

「反応がいちいち薄いんだよ!!クールぶってねえでもっと照れて喜べよ!!!」


冬真うぜえな。
なんでこいつがこんな興奮してんだよ。

こう見えてもなんて言ったらいいか反応しづらい話題に俺なりに反応してんだっつーの。

確かに咲田のことはあの時べた褒めはしたけど、それで本人がそれ聞いててしかもあそこまで照れて顔赤くしてモジモジするなんて思わねーだろ。だいたいあれくらいいろんな奴から言われてるだろうし。


俺は突如浮上してきた“咲田が俺のことを好きかもしれない”という可能性に、少しは動揺してんだよ。


「ぶっちゃけ想、咲田くんのこと悪くねえと思ってるだろ?」

「うん?…まあ、今んとこ悪いとこは見当たんねえな。」

「ほらほらほら!もう想から告れよ!」

「なんでそうなるんだよ!つーかお前さっきからやたら咲田のこと推すけどなんなんだよ!」

「だってお前ら見てると痒いんだよ!俺が想ならそっこー付き合ってるぞ!」


…と、冬真のその発言を最後に、先生が教室に入ってきて会話はそこで終了した。

まあ冬真は初対面の時から咲田のことすげえ美形、とか言って気になってるっぽかったもんな。いや、だからと言って、俺から告るっつー発想は意味不明だ。



その後の授業中は、眼鏡無くて黒板見えねーしノートに写すのは諦めて教科書の文字を目で追っていても、ふとした瞬間咲田のことが頭の中にチラついてしまうのだった。


そもそもいくら綺麗で可愛くても男だし、全然意識なんかしたことなかったっつーの。


気さくなやつだから普通に話しやすくて、普通に友達って感じに思ってたけど。


でも改めて考えてみたら、咲田が作った弁当毎日食わしてもらってるし、まるでそれは、彼女みたいな存在で……?


って、うっわ…!そうだよな。友達がわざわざ毎日友達に弁当作るとかねえよな。てことはなんだ?俺に気があるから弁当作ってくれてたっつーこと?

え?なんだよそれ、健気かよ。


相手が男とは言え、悪い気がしない時点で、どうやら俺も男子校のこの環境に毒されてきているらしい。


もしほんとうに咲田に告られてしまったら、俺はどう返事をするべきだ?…と、真剣に考えてしまっている自分が居た。


いやいや、だから、気が早いって。


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