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「あ〜っ!ダーリンおはよう今日はね、お弁当作ってきたよ〜!」


ふっ、と突如耳に息を吹きかけられたかと思えば、奴がにこやかに手を振りながら俺の真横に立っていた。


「ゲッ…」


最低、朝から気分悪すぎる。

だいたいダーリンってなんだ気持ちわりぃ。


無視してさっさと先を行こうと歩みを止めずに居たが、冬真が「あ!昨日の!」と反応してしまった。

冬真余計なことすんなよ、俺は先に行く。

ズンズンと歩くスピードを速めると、「あっおい!」と冬真が俺を呼ぶが知らねえ。


「もー、冷たいなあ。まあそんなところも好きだけどね?」

「えっお前想のこと好きなん!?」

「そうだよー。彼氏だよー。」

「はぁ!?初耳なんだけど!?」

「違うに決まってんだろ!!!バカが!行くぞ!!!」


さすがに聞き捨てならない奴の発言に、振り返って否定する。バカの首根っこを掴んで、引き摺るように歩みを再開した。


「ちょ、痛え痛え!なに!どゆこと!?」

「なんか変なのに目ぇ付けられたんだよ!とにかく関わりたくねえからお前もあいつに近付くなよ!」

「変なの?にしては美人じゃん。」

「ならお前あいつどうにかしろ!」


つーかなんで選りに選って俺なんだ、冬真が居るだろ!お前肝心な時に使えねえな!って完全に八つ当たりだけどとにかくあいつから逃れられたらなんでもいい。


「どうにかしろって言われても、あの人想のこと好きっつってんじゃん?俺にはどうにもできねーかな〜。」


おい、なにニヤニヤしてやがる。
お前ちょっと楽しんでんだろ。


「冬真しばく。ニヤニヤ笑ってんじゃねえ!!!」

「うわっちょ、やめろ!俺に当たるなよ!!!」


スクールバッグをぐるんぐるんと振り回し、さあ冬真をぶっ叩く!と狙いを定めたところで、冬真は猛ダッシュで走り出した。

数十メートル冬真との距離が開いたところで、冬真は安心するように振り返る。


「はぁ、はぁ、…想っ、余計な体力っ、使わせんなよっ…!」


教室に辿り着いた時には、冬真はぜえはあ息を切らしているから、クラスメイトからいちいち「どうした?」と突っ込まれていた。


昨日からずっと、いや、その前の日からか。

あの野郎が現れてから気分はずっと最悪だ。

昨日は咲田来なかったし、弁当も食えなかった。

咲田の弁当楽しみなのに。

美味しいのは勿論、卵焼きや野菜炒めの味付けが辛すぎず薄過ぎず丁度良い。白米を食べる手が進む。

今日は、借りたCDも返したいし、咲田が来なけりゃ俺から行く。


奴から逃げる、咲田のとこ行く。

朝からそんな計画を立てながら、俺の1日が始まった。


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