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「…材料、持ってきてくれた時くらい食べてってよ…。あっ、…迷惑じゃなかったら!!」


慌てたように言葉を付け足す咲田。


つーか迷惑じゃなかったらって、それお前が言うのかっていつも思う。

気遣いしすぎ。
そんなに人に気ぃ使ってたら気疲れするだろ。

別に迷惑に感じたことなんて一度もねぇのに。

咲田って、ちょっと変わった奴だ。

料理とかもっと自信持っていいのに、いつも自信なさげ。

友達とかたくさん居そうなのに全然そういう素振りもない。

みんなを惹きつける容姿を持つ人気者なクセに、ちっともそうとは感じさせない、中身は至って普通の男子生徒。


こんな咲田だから、余計に人気高いのだろう。


「…まあ、咲田がいいんだったら上がらせてもらうけど。」

「うんっ!!!」


俺の言葉に、咲田は満面の笑みで頷く。


「ちょっと待ってて、すぐ用意するから!」

「んな急がなくていいぞ。まだ時間早いし。」


共同部屋にかかった壁時計を見れば、時刻はまだ18時前だった。


「てか同室の奴大丈夫?俺いたらまずくね?」

「…んー、多分帰ってくるの遅い時間だし大丈夫だと思う。」

「ふぅん。じゃあまぁいいか。」


「適当に寛いでて。」という咲田のお言葉に甘えて、案内された咲田の自室にある一人用ソファーに腰掛けた。


きちんと整理整頓された勉強机と本棚に、綺麗に畳まれた布団が置いてあるベッドはどこか咲田らしさを感じる。

俺の部屋はこんなに綺麗ではないけど、物が少ないところとかになんとなく親近感が湧いた。


「早見くんなに食べたい?」

「…あーなんでもいいよ。」

「じゃあ、オムライスとか…。」


またまた自信なさげに、伺うように問いかける咲田。もし俺の苦手な食べ物だったら…とか考えてんだろ、どうせ。こいつ、人が良すぎるから。


「俺オムライス好き。」


だから、安心させるようにニッと笑ってそう答えれば、咲田は嬉しそうに、ここへ来て二度目の満面の笑みを浮かべるのだった。


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