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咲田と初めて昼食を共にした翌日。


咲田は宣言通りプチトマトを多めに入れてきてくれたようで、赤いプチトマトが3つ並んだ弁当を俺の前に広げた。


「それ、早見くん用だから良かったらどうぞ。」


そう言って2個目の弁当箱を俺の前に差し出してくれた咲田に驚いた。


「え、まじで?いいの?」

「うん。」

「うわ、想ずりー。」


冬真が不満そうに俺を見る。

そうは言われてもこのプチトマトが入った弁当は俺のものだ。冬真にはやらん。と少し冬馬から弁当箱を遠ざけた。


「やった〜。んじゃ、ありがたく。いただきます。」


いつもはあまりしない合掌をして、咲田お手製の弁当に手をつけた。


「…味、大丈夫…?」


なんでそんなに不安げなのか、自信なさげに聞いてくる咲田。


「うん、美味い。まじサンキュー。」

「よかったー…。」


咲田がホッと息を吐いた。

そんなに自信がなかったのだろうか。

安心したように咲田も弁当を食べ始めた。





こうして、最初はありがたく弁当をもらっていた俺だったが、それからというもの咲田は毎日俺の分の弁当を作ってくれて、さすがに申し訳なくなってきた頃。


「なんか、そろそろきつくね?大丈夫?」

「え、なにが?」


俺の問いかけに、不思議そうに首を傾げる咲田。


「や、弁当。毎日はさすがに…材料費もかかるだろうし…。」

「…あ…ごめん、やっぱり迷惑だった?」

「じゃなくて、お前が。」

「俺?」


キョトンとした顔で疑問符を浮かべる咲田。


「俺…は…寧ろ、食べてもらえて嬉しいんだけど…あ、逆に気ぃ使わせた?」


…逆に気ぃ使わせた?って…

こいつ、お人好しすぎにもほどがある。
気ぃ使った俺に咲田が気ぃ使ってどうすんだ。


「…咲田が良いんなら俺はありがたく貰うけど。」

「うん。俺が好きで作ってるから。」


満面の笑みでそう言われて、俺は何も言えなくなった。


「なんかおもしろくねー。」

「なにが?」


最近、昼食時間が終わり咲田が帰ると、冬真は不機嫌そうな顔をする。


「想まじうぜー。」

「は?なんでだよ!」


いきなりうぜーってなんだ、理不尽すぎる。

なににしろ、不機嫌な冬真はめんどくさいから放置するのが1番なのだが。


「バカだしアホだし、鈍感だしまじイラつくわー。」

「は?意味不明。俺なんかしたかよ?」

「べっつにー。」


口尖らせて、小さい子供のように拗ねている冬真。

わけわからんからもうこいつは放置だ。


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