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その日から咲田と俺たちは、廊下ですれ違ったりすると必ず一言二言は話す仲になった。

その度に注目を浴びるのは、人気者の咲田と冬真のせいで、だから俺は一歩下がり、傍観者となる。

けれど、毎度咲田が俺にも話しかけるので、傍観者にはなりきれない。


「早見くんたちはいつもどこで昼ご飯食べてんの?」

「移動面倒だし教室。」


咲田の問いかけにサラッと答えた俺の返事に、咲田は「ふーん」と相槌を打つ。その後、ニッと笑みを浮かべた。


「俺も一緒に食べていい?」


そして、そんな咲田の発言に、俺は冬真の方を見る。


「う、うんうん。良いよ良いよ。」


慌てて冬真が頷いた。

やっぱりこいつ、咲田のこと結構意識してんだろ。俺はそんな冬真に小さく笑う。


「早見くんは?」

「あ?いいけど。」

「…よかった。」


ホッと一息ついて、安心したように笑う咲田を、俺はちょっと疑問に思う。


「てかそっちのクラスの友達とかは大丈夫なわけ?」


こいつにも今まで昼食を一緒に食べていた友達がいたはずだ。

それなのに俺たちと食べて大丈夫なのか、と問いかけるが、返ってきた返答は予想していたものと少し違っていた。


「うーん…俺実は、昼ごはんはいつも一人で食べてたんだよね。」

「えっ、咲田くんなら友達いっぱいいるだろ!なんで一人!?」


冬真が驚きながら問う。

確かに、人気者の咲田が一人ご飯とは俺も驚きだ。


「えー、俺全然友達いないよ?誘われたらたまに誰かと食べるって感じでほとんど中庭とかで一人ランチ!」


そう言ってヘラリと笑ってみせる咲田。

多分この人、人気者だから、どこか一歩距離を置かれてるんだろうなと、俺は思った。

まあそれでも咲田の人柄なら簡単に友達作ろうと思えば作れるだろうけど、それをしないのは、本人がそれを望んでないのだろう。…という俺の勝手な想像。


「へぇ…そうなんだ…。」


意外そうに咲田を見る冬真。


「まあ…、好きなときに来れば?」

「うんっ!ありがとう!!」


特にかける言葉が思いつかず、それだけ言えば、咲田は満面の笑みを浮かべてお礼の言葉を口にしたのだった。


「……つーかなんで俺らなわけ?」

「気になってんだろ?お前のこと。」

「…いやいやいや!だからなんでそーなんの!?」


咲田が俺らの前から立ち去った後、不思議そうに咲田の後ろ姿を見つめながら呟く冬真に言えば、やはり動揺が混じったように首を振る冬真がなんかおもしろかった。


こいつに彼氏ができるのも、案外近い未来かもな。…なんつって。


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