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「また昨日告られたんだが…。」
げっそりとした顔で俺にそう話す冬真。
なんで関わったことも無いのに告られるかねぇ。と不思議そうにしている冬真だが、そんなん顔に決まってんだろ。
と俺は分かり切ったことなので口には出さない。
「想(そう)は?お前の話全然聞かねえけど、どうせお前も告られてんだろ?」
俺にそう問いかける冬真だが、残念ながら、いや残念ってこともないけど告白されたことはない。
「冬真と一緒にするなよ。俺に告白する物好きなやつなんかいねーよ。」
「はあ!?じゃあ俺に告白する奴は物好きって言うのかよー!?」
「言ってねーよ!顔だよ顔!お前のその顔がモテる理由だろーが!」
あぁ。分かりきった事言っちまったぜ。まったく。こいつ、自分が顔良い自覚がまるで無い。いい加減こんな鈍感野郎の相手するのも疲れるわ。…とため息を吐くが、
「何言ってんだよ。おめーに言われたかねえんだよおおお!」
教室の中心の席で、そう大声を出した冬真にクラスメイトたちの視線が一斉に冬真へ向けられた。
「バカ、声でけーよ!」
「その眼鏡なんなんだよ!?」
「は?」
お前いきなり何言ってんの?と言う目で冬真を見る。眼鏡は眼鏡だ。分かり切ったこと聞くな。
「俺は知ってんだぞ!?お前が告白されなくなったのはその眼鏡を付け始めた時からなんだよ!」
「はあ?」
…いやいや、なんだその眼鏡事情。
確かに俺は眼鏡をしている。
黒縁眼鏡でちょっと陰気なやつだ。
当時は中学生で、おしゃれとか無関心だったから適当に選んだダサ眼鏡。
「コンタクトにしろよ!」
「は?やだよめんどくせー。」
「いや、しろ!」
「やだって。なんでだよいきなり!」
「したらぜってーお前も告られる。」
「はあ!?別に告られたかねーよ!!!」
うるさい冬真の顔面を、バシッと机の上にあった英語の教科書で叩けば、少しだけ大人しくなった。
「今日もあの2人仲良いな。」
「なんか、話しかけづれーよな。」
そんな感じで、クラスメイトからそんなことを言われてるとも知らない俺たちは、いつも通りバカな会話をして、バカなことして、高校生活を送っていたのだが、そんな生活にやや変化が訪れるのは、その後すぐのことだった。
自分たちが、クラスでわりと目立っている存在であることも知らない俺たちは、今日も平和に幼馴染みと、呑気な時間を過ごしていた。
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