〜結局水着を試着だけすることになったリリスティア〜
花謡族の店員
「…………リリスティア陛下って素直な方ですよね」
ヒル
「国政に関わることには頑固なんだがな」
花謡族の店員
「それを分かってらしてうまいことなさる総指揮官様には頭が下がります」
リリスティア
(渡された水着の布の量が少なすぎる……こんな物着て泳ぐと、少しの水圧で全部脱げてしまうんじゃないか?)
ヒル
「いかがですか陛下」
リリスティア
「布が少ない。あとなんだこの無駄なファスナーは……」
花謡族の店員
「よく流行しているデザインでしてね。バンドゥビキニと申しまして、肩紐がなくセクシーなデザインでございます。語源は「はちまき」だとか」
リリスティア
「確かにハチマキだな。頼りないことこの上ない」
ヒル
「どう頼りないのですか」
リリスティア
「そういう時だけ素早く反応するのやめろ。……上下バラつきがあるのだが、これはどれを着ればいいんだ?」」
花謡族の店員
「お好きな組み合わせを。合わせて頂いても結構ですし、同系色、または反対色で劇的に着こなすのもよろしいかと。陛下でしたらなんでもお似合いになりますよ!」
リリスティア
「もっと布が多いのが欲しいんだが」
花謡族の店員
「それならワンピースタイプをモガッ」
ヒル
「あまりたくさん試着すると店の迷惑になるかと思います。その中から決められては」
リリスティア
「……それもそうか。実用は出来ないだろうしな」
花謡族の店員
(総指揮官様、貴方いつもこんなことされてるんですか……( ;・∀・))
ヒル
(いや? 仕事が立て込んで疲れた時とか、たまにな)
花謡族の店員
(貴方様の立場で仕事が立て込んでない時なんてあるんですか……)
リリスティア
「………………」
リリスティア
(水着を勧めてきた時は「またか」と呆れたけど、いざ着てみると楽しいな)
リリスティア
(普段はミリアの用意した服ばかりだし、……少し太ももが太くなったのが気になるけど)
花謡族の店員
「……楽しんでいらっしゃるようですね。試着室から中々出てこられません(笑)」
ヒル
「女性である陛下にはご自分の事だけを考える時間も必要だ。こうして無理やりにでも機会を作らない限り、ゆっくりされることなどないがな」
花謡族の店員
「なるほど……。私はてっきり、総指揮官様はただ単に陛下の水着姿を見たいだけかと。いや、修行が足りませんね。反省しております」
ヒル
「見たいに決まってる」
花謡族の店員
「少しは取り繕ってもらっていいですか……」
リリスティア
「ヒル、もう満足した。着替えるから、帰りの用意をしておいてくれるか?」
ヒル
「そのまま出てきてくれて結構ですよ」
リリスティア
「……………………」
ヒル
「陛下?」
リリスティア
「前々から思っていたのだけれど、お前は…………その、私がこんな格好をしていても、平気なのか?」
ヒル
「どちらの意味でしょうか」
リリスティア
「危なくない方の意味」
ヒル
「ヴァイスの民族衣装自体が元々動きやすい軽装が多いですからね。だからといってはなんですが、その点では他の視線に心配はしておりません。ただ」
ヒル
「……お前が誰かを誘う為に装っているのなら話は別だが」
リリスティア
「……………………」
シャッ
ヒル
「!」
リリスティア
「誘っているように見えるか?」
ヒル
「……そうだな」
花謡族の店員
(仲がよろしいんだよなあ……)
花謡族の店員
(我々の事など気にせずに、陛下も総指揮官様も、幸せになられたらよいのに)
花謡族の店員
(誰も、あなた方を咎めようとはしないでしょうに。……ヴァイスの民は、こんなにも禁欲的だったかな……)
続く