リリスティア
「――綺麗な店舗じゃないか。白い壁に、水路の青が映えて海みたいだな。よく客の目を意識している」
花謡族の店員
「有難うございます! 流行には敏感でして、色んな国から色々な衣料品を揃えているんですよ! あっ、ちゃんとあの国のものは抜いてますから(笑)」
リリスティア
「気を遣わせてしまってすまないな。本来なら垣根なく並べたいところだが」
花謡族の店員
「戦争中はそうもいきませんよね。だからこそ、彩りのある服を着て、少しでも皆さまが楽しい気分になって頂ければと思っております!」
ヒル
「これをリリスティア陛下が着てくだされば俺の心は楽しくなるんだが」
リリスティア
「なんだその布の面積が無い服は……」
ヒル
「水着だ。前にも着ただろう」
リリスティア
「水着としての役割を果たしているのかそれは。夜の酒場にいる女性と変わらないぞ」
ヒル
「水着は水着です」
リリスティア
「着ないから」
花謡族の店員
「まあまあ総指揮官様」
ヒル
「俺はただ、水着を召された陛下が見たいだけなんだがな」
花謡族の店員
「ご冗談なのか本気なのか……」
リリスティア
「気にしなくていい」
花謡族の店員
「ははは。まあ、もし着て頂ければ、陛下と同じ水着ってことで売れ行きが良くなるだろうなあなんて事なら私も思いますが(笑)」
ヒル
「試着室で着るくらいなら構わないだろう?」
リリスティア
「そういう問題じゃ……」
花謡族の店員
「よろしければ献上致しますよ。それで、持ってます程度の言葉を賜れたら……」
リリスティア
(…………水着か…………)
リリスティア
(思えば、年頃のやつがする遊びを一切してこなかったな)
リリスティア
(私も普通に生活していたら、想う人と一緒に海や川に出かけたりしたんだろうか)
リリスティア
(ただの村の娘で、……ただの、近所の男性なら)
ヒル
「――どうした?」
リリスティア
「なんでもない」
花謡族の店員
「気を悪くされましたか……?」
リリスティア
「ああいや、そうじゃないんだ。……じゃあ、何着か見せてもらおうかな」
花謡族の店員
「!! はい! 今だけちゃんとお店の扉も閉めておきますので!!」
ヒル
「……………………」
続く