五組目・ヒル&リリスティア
夏だ!花火だ!肝試しだ!(完結)

*肝を試しているのか試されているのか分からない状態の御庭番たちを捨て置いて、ついに最終組が出発した*




リリスティア
「…………ヒル」

ヒル
「どうされましたか、陛下」

リリスティア
肝を試すべく現れる刺客はどういうタイミングで現れるんだろうな

ヒル
「……………………」

リリスティア
「ふふ、少し楽しみだな。結構反射神経は良い方だと思うんだが、不意打ちに対処出来るかどうか……」

ヒル
「…………………………」

リリスティア
「短剣はいつも胸元に仕込んであるし、今日は足にもある」

ヒル
「………………………………」

リリスティア
「楽しみだ……肝を試されるのが……」

ヒル
「陛下、安定のイスタリカモードですね




弥一
(女王さんこえええええええええええええ)

久世
(見て下さいあれ。見て下さい。イスタリカ構えてますよ)

詩帆
(既に抜き身ってどういうことですの)

ウェラー
(これはこちらも本気でかからねばなるまい……(チャキ))

詩帆
(肝試しってそういう遊びじゃありませんわよ!?)

弥一
(なんか雰囲気的に軍事演習みたいになってねーか。まじ怖いんすけど)

久世
(…………彼がちゃんと軌道修正をしてくださるとは思うんですが……)



ヒル
「リリスティア陛下」

リリスティア
「何だ」

ヒル
「肝試しは、そういう肝を試すものではございません」

リリスティア
「……何?」

ヒル
「例えば、この暗い道の中、不意に正体不明の何かが襲いかかって来ることを想定してください」

リリスティア
「(正体不明の何か……)」

ヒル
「多少、驚きませんか?」

リリスティア
相手を確かめてから斬る



久世
(…………そうでした。この方、元々聖騎士でしたね)

詩帆
(異形との遭遇や野戦には慣れてますわよねん……)

久世
(これは困りましたね……)

弥一
(あの人、どう説明するんだろ)



ヒル
「……陛下、ではこうしましょう」

リリスティア
「ん?」

ヒル
「暗闇からいきなり全裸にスカーフだけを巻いた神鉄の魔導師が前後に腰を振りながら飛び上がって三回転をしたのち陛下に襲いかかってきたとしたらどうですか」

リリスティア
「気持ちの悪い想像をさせるな」

ヒル
「怖いでしょう」

リリスティア
当たり前だ

ヒル
「それです。その恐怖心を煽り、驚かせる役が世闇の御庭番たち。そして驚かされる役が陛下です」

リリスティア
「……っ、御庭番たちが全裸で踊りながら飛び出して来るのか……?! だ、大丈夫なのか? いや、彼らなら三回転くらいはわけがないと思うが……」


弥一
(その発想は無かった)

ヒル
「落ち着いてください陛下。そうではありません」

リリスティア
「違うのか……」

ヒル
「そんな驚かされ方をしたらさすがの俺も世闇との白の誓約破棄を考えます。

久世
(それは私だって考えます色々と)

ヒル
「つまり、驚かし、驚かされることを一種の遊びとして楽しむ。それが肝試しなのです」

リリスティア
「………………意味は?」

ヒル
「そうですね……。――あ、陛下。今その影に全裸の神鉄のm」

リリスティア
「!!!」

ヒル
「おっと」

リリスティア
「いたのか!?」

ヒル
「いえ?」

リリスティア
「…………は?」

ヒル
「…………」

リリスティア
「………………」

ヒル
「そんなに怖かったか?」

リリスティア
「い、いや! それは誰だって怖いだろう!? だって全裸の神鉄の魔導師とか……」

ヒル
「――俺の腕に、しがみつくほど?」

リリスティア
「え……、あ、あれ?」

ヒル
「…………手を、離してくれるか? さすがに歩きにくい」

リリスティア
「!!」

ヒル
「つまり、肝試しをやる意味は、こういうことだな」

リリスティア
「な、嘘だったのか!?」

ヒル
「ああ。あいつがこんなところにそう簡単に侵入出来るわけないだろう」

リリスティア
「……くっ」

ヒル
「らしくないな。あからさまな嘘だっただろう?」

リリスティア
「……だって」

ヒル
「…………リリスティア」

リリスティア
「へ……」

ヒル
「大丈夫だ。今は俺がいるだろう……?」

リリスティア
「ちょ……ヒル?」

ヒル
「何がいるとも分からない暗闇が怖いなら、俺に寄り添って歩いていけばいい。目を閉じたまま、何も見なくていい。……俺が、お前を運んでやるから」

リリスティア
「ちょっ、ちょっと……これじゃ本当に前が見えない……! こっちの方が怖い……」

ヒル
「それなら良かった」

リリスティア
「は?」

ヒル
「今、俺のことしか考えられなくなっているだろう……?」

リリスティア
「な、なに言ってるの……!」




久世
(今さらっとヤンデレ発言しましたよね)

詩帆
(ええ……)

弥一
(今出ていったら俺たちどうなるんすか。ねえ)

久世
(しかし今出て行かないとさすがに苛々が募ってなりません。あと肝試し自体が行方不明すぎます)

ウェラー
(…………知らんぞ)

久世
(いきましょう)

詩帆
(ええええええええ絶対やばいですわよ絶対殺されますわよ!!)

弥一
(大丈夫ですわよぉ。ヒル様ですし。ほら、行きますわよ!)

詩帆
(気持ちの悪い喋り方をしないでくださいます!? あ、ちょ……知りませんわよ!!)




久世
「そこなリア充!! あいや待たれい!!!(裏声)」

リリスティア
「!?」

弥一
「蝋燭を立てたくば我らを倒していけ!!(裏声)」

リリスティア
「な、何者だ!?」

ヒル
「…………」

久世
「そしてヴァイス王国女王リリスティア、お命頂戴いたす!!」

詩帆
(自分で肝試しの本筋離しているじゃない……)

リリスティア
「ヒル! 離せ! 刺客だ!」

ヒル
「……いいえ、陛下。このままで大丈夫です」

リリスティア
「なんだと? わっ!?」

ヒル
「この程度の輩、陛下を抱えたままで倒してごらんにいれましょう(ガバァ)」

リリスティア
「きゃっ!? ちょ、ちょっとヒル! 荷物か何かか私は!」

ヒル
「随分やわらかい荷物だな……」

リリスティア
「――ひっ、や!! そんなとこ触るな!」

弥一
ナイスアングル女王さん!!!!あとその顔の位置うらやましすぎ! 尻! 尻が真横!!! なるほどその抱え方は参考になる!!」

久世
「弥一君、私たちの立場が思い切り利用されてることに気づきませんか

リリスティア
「弥一?」

久世
「ヒル様、それ以上やるとガチで本編との温度差が酷くなる一方ですのでやめてください

ヒル
陛下が……こんな体でいらっしゃるから……

久世
「顔と声で誤魔化すのやめて頂けませんか」

リリスティア
「刺客はお前たちだったのか……。そうか、脅かし役だったな」

詩帆
「あーあ、興ざめですわ」

弥一
「けど女王さん怖いもの無いんでしょ。元から驚かそうとする方が無理なんだって」

ウェラー
「一理ある。日常より未確認生物が闊歩するこの国に於いては特にな」

久世
「…………ですが、気づいていましたか?」

リリスティア
「?」

詩帆
「なにがです?」

久世
「スタート地点から、蝋燭を立てる道までは一本道。途中曲がり角や分起点を入れても、出発の時間からしてお互いがどこかですれ違うのは当然なのです」

ヒル
「まあ、そうだな」

久世
「不自然な組や人が、いませんでしたか?」

リリスティア
「…………」

詩帆
「…………」

弥一
「まさか…………」

久世
「さて、お開きにしましょうか」

ウェラー
「…………そ、そうだな」

リリスティア
「…………どういうことだ?」

ヒル
「さあ、どういうことだろうな……」


終わり


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