21

――そして少女はゆっくりとその扉に近づくと、勇気を振り絞りひんやりと冷たいドアノブに手をかけた。

tobecontinue...


「……おわー…」

さあさあ皆様、ついにこの日がやって参りました。何の日かって?
例のオカルトサイトのオフ会ですよ!
管理人のピヨ、私、そして残る一人はジュンさん。
ぶっちゃけ皆の詳しい情報等は不明だが、ネット上のやり取りでは二人共いい人だという認識を持っている。
遠方のためや、用事があってこれないというユーザーさん達は私達のやり取りを見ながら羨ましそうにしていた。
私が今いるのは待ち合わせ場所。到着した事を二人にメールで知らせ、連絡がくるのを待ちながら昨日ピヨから配信されたホラー小説を読んでいた。
…相変わらず、終わらせ方が上手い。メチャクチャ続きが気になる仕様だ。


「さて、そろそろ来てもおかしくない時間だけど……」

と辺りを見渡してみたところで、ちょうど携帯がメールの着信をしらせた。
送り主はジュンさんだ。

「えーっと何…?"もうすぐ集合場所に到着。怜さんはどんな格好なの?……」

ジュンさんもどうやら到着するようで、私の背格好を問う文に続き自分の見た目等も書いてあった。
黒髪のショート、服装はシャツにベスト、黒っぽいジーパンにスニーカー……との事だ。

「……ん?」

ちなみに予定外の連れがいる、とメールの最後に記載されている。
とりあえず自分の服装をメールで教えて待ってみる。
すると、今度は主催者であるピヨからも到着のメールが届いた。
ジュンさんと同じように自分の格好をメールで送り、ふぅ、と息を吐いて顔を上げる。……すると、そこには見知った顔が。

「……」
「……偶然だねぇ日吉君?」

…ピヨ。まさか、と思った事もあったといえばあった。
だがまだ決まった訳ではないし、相手の出方も気になる。ここは一つ確認しておくべきだろう。

「……ピヨ?ですか?」
「!……やっぱりその格好、怜さん……ですか」
「……怜でーす」






という訳で私達はとりあえずジュンさんとその連れと落ち合うまで植え込みの石垣に腰を落ち着けることにした。
…二人の間の微妙な距離感が気まずさを煽る。

「…」
「……あ、昨日配信した連載の続きも面白かった。……です」
「……ありがとうございます」

さっきからずっとこんな感じで短い会話を続けている。かれこれ10分、そう、まだ10分程なのだ。
しかし気まずい空間というのは時間を長く感じさせるようで、まるで日吉と出会ってもう一時間は経ったんじゃないかとさえ錯覚をおこす。
時間を確認しようとポケットから携帯を取り出そうとした、その時だった。

「あのー…もしかして、怜さん?」
「!……あ、」

横から声をかけられ顔を上げる。
するとそこにいたのは、黒髪のショートヘアにシャツとベスト、黒っぽいジーパンといった、ジュンさんが説明した服装そのものの……………木更津淳だった。

「?……あれ、すみません人違いでしたか?」
「あいや!はじめまして怜ですー…」
「ですよね、良かった。……でも驚いたなぁ、女の人だったんですね」
「あは、男だと思ってましたー?」

淳かよおおおおお。まさかの?え、まさかの木更津淳?何お前オカルトとか好きなの?いやまあ雰囲気的には好きそうだけれども。
……いやはや、驚愕である。

「あ、ピヨさーん、ジュンさん到着したよ」
「はい……あ、」
「あれ?」

とりあえず少し離れた位置に座っていた日吉をハンドルネームで呼び近くにこさせる。
すると、ピヨとジュンさんは顔を合わせ、両者少しばかり驚いた顔をしていた。……まさか?

「……氷帝の日吉君、だよね?クスクス、すごい偶然」
「貴方は聖ルドルフの……」
「木更津だよ。木更津淳」

まさかのまさか、顔見知りだったようだ。
それからとりあえず三人で簡単な自己紹介をし、今日の予定の確認をする。ちなみにほぼ知り合いのような部分が多いのでお互い本名で呼び合う事になった。
そこで私は一つ、ある事に気づいた。

「あれ、淳の連れって言うのは?」
「ああ、トイレ寄るって言ってたから先に来たんだ。そろそろ来ると思うけど……あ、来たみたい」

とジュンさん、改め淳が後ろを振り向いて言ったので同じく振り向く。小走りでこちらに向かってきているのは、まあそれほど予想外という訳でもなく彼だった。

「待たせただーね!」
「紹介するよ、こいつは柳沢慎也。僕の同級生」

うおぅ、マジでだーねって言うんだ。
聖ルドルフのD2が揃うとなかなかに圧巻だ。並んで立っている様がCDのジャケットにでもなりそうではないか。

「この二人がネットの友達……って、あああ!お前氷帝の日吉だーね!」
「どうも」

どうやら氷帝とルドルフは関わりがあるようで、柳沢と日吉も顔見知りだった。
…もしや、氷帝とルドルフのあの敗者復活戦はすでに終了しているのだろうか。
しかしこの世界はあの原作通りではない事は明らかだ。…なぜなら、ここでは幸村精市が入院していないから。
そうなるとやはり大会等も私の知らない所で自動的にはぶかれているのか、それとも、原作とは違う形で同じ結末をむかえる事になるのだろうか。

「こっちは風篠怜さん」
「はじめましてー。よろしく」
「よろしくだーね」

とりあえず難しい事は後で考えるか考えるのをやめるかしよう。
お互いに軽く挨拶をし、私達は予定通り一番目に行く事になっていたパワースポットへと向かった。







「それで観月がカンカンになって怒鳴り始めたんだーね!」
「へえ〜…ルドルフって大変そうだねぇ」

1つ目のパワースポットを回った我々は、昼時という事もあり近くのファミレスで昼食をとる事にした。
先ほど行ったパワースポットは古代のなんたら文明とやらが栄えていた頃から存在しているらしい巨大岩だ。しかしオカルト好きとして集まった我々だが、ぶっちゃけここにいる全員そういったものを信じてはいなかった。
好きな物を必ずしも信じてるとは限らない。
なので一応じっくりと観察してはみたが、正直のところ、必死に岩を撫でている人達を内心笑ってしまったのは私だけではないはずだ。

「面白いねー、会ってみたいわその観月さんて人」
「まあオススメはしないけどね…クスクス」

観月さんは昔から好きだ。まあ好きなのはキャラクターとしてだから、現実に会ったとしたらどんな印象を抱くかは全く分からない。
そういえば、この世界に来た初日に記入したあの紙。日吉とこういう形で知り合えたのはおそらくアレのお陰なんだろうが、淳や柳沢とは何故関われたのだろうか。今更ながら私はキャラと関わりすぎている気がしなくもない。
……まあ、お兄さんのサービス精神といえばそれで終わりなのだが。

「それじゃあそろそろ次に行きましょうか」
「そうだーね」

日吉が切り出し、我々は次の目的地であるミステリースポットへ向かう準備を始めた。







あれから予定通りツアーを進めていった我々は、今最後の目的地を前にしていた。
大きな門の向こうにそびえ立つ巨大な建物。どこまでも続いていそうな錯覚を覚える程の広い敷地。
……ここは、私立氷帝学園。

「…どうしてこーなった」
「ん?」
「いや何でも」

ボソッと呟き夕焼けに染まりつつある空を見上げる。
もうすぐ日が沈む。


「……ラストはここ、氷帝学園です」
「なんで氷帝だーね!お前、実はただ学校を自慢したいだけなんじゃないだーね!?」
「は?違いますよ」
「氷帝学園七不思議……でしょ?」

柳沢と日吉の会話に淳が割り込んだ。
確信を持って淳が放った言葉は、氷帝学園七不思議。

「その通りです」
「氷帝学園七不思議……?なんだーねそれ」
「ネットで静かに広がりつつある都市伝説ですよ。氷帝学園には七不思議がある、と」

東京都内にある私立氷帝学園には七不思議がある。それら全ては夕刻より始まり夜更けに終わるショーのようだ、と噂されている。……らしい。
私もネットで知った訳だが、まあネットの情報というのは信憑性に欠ける。
七不思議は存在するのかしないのか。するとすればそれはどんな七不思議で、その真相とは一体何なのか。
……是非知りたい。

「でも部外者が入って平気なの?」

淳が日吉に問う。
確かにこの学園には少数だがそれなりのお坊っちゃまやお嬢様が通学している訳だし、警備はよその学校よりも厳重だろう。他校の生徒が休日に、しかも私服で入れる訳がない。

「大丈夫ですよ、許可はとってありますから」
「へ?」
「どうやって……」
「実の所、七不思議の噂は学園でも結構広まっているんですよ……」

学園に通う生徒の中には七不思議、つまりショーが発生する時間帯に学校にいる生徒も多数おり、生徒達の間で不安や恐怖の声が広まっているらしい。
そこで日吉は、七不思議の調査・解明をするという名目で、我々オフ会メンバーが学園に入る許可をもらったそうだ。

「用意周到なこって…」

という訳で、日吉の粋な計らいによって、我々は氷帝学園七不思議解明へと動き出したのである。





明かされた正体
(さあて、解明するぜ七不思議)






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あれ、2ヶ月も更新していなかった……だと?



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