15

蓮二に連れられ休日にも関わらず立海までやってきた。
まあたまにはテニスのシーンでも見ておこうかなと思ったのもあるし、赤也の名前を出されるとなんとなく行かなければと思ったのだ。なんとなく。
テニスコートを横目に見渡しながら中庭へと向かう。
中庭だとテニスコートは見えないと思われがちだ。だか一ヶ所だけ、中庭からでもテニスコートが見える場所を発見したのだ。
その場所とは中庭に生えている桜の木の上だ。中庭からコートを見るのに邪魔になっている小屋よりも高くなるために丁度見える。
まあ木登りなんかする人間そうそういないだろうから皆知らなくて当然なのだが。
ふぅ…と息をつき肩にかけてたギターを逆の手に持ちかえグルンと大きく腕を回す。すると、ボキリと音がした。
昔総長達の前で同じ事をしたらギョッとした顔で見られたっけ。
しょうがないじゃん音くらい誰でも鳴るよ。

なんかテニスコートの方が騒がしいと気づいたのはついさっき。
いや騒がしい事はいつもの事なのだが今日はいつも以上だった。
立ち止まって見てみれば、そこには見慣れない(まあある意味見慣れた)集団がいた。

「……氷帝?」

跡部を筆頭にテニス部部室前に群がるイケメン達。さしずめ幸村へ挨拶でもしているのだろう。
幸村と蓮二の二人と握手を交わした跡部は以下レギュラー達を引き連れ部室へ入っていった。

「合同練習か…」
「お、風篠?」
「あ、ジャッカル」

ボケッとしていたら後ろから声をかけられ、振り返ればそこにはジャッカルがいた。

「なんだ来てたのか」
「うん、蓮二に連れられて」
「へぇ柳にね」

学食で買ってきたであろうスポーツドリンクを数本抱えたジャッカルはおっと、と言ってコートへ歩き出した。

「俺はまだ練習があるからもう行くぜ」
「ガンバ」
「おう、じゃあな」

実に爽やかだ。素直にそう思う。
いつも仁や蓮二のような中学生とは思えない中学生と一緒にいるからか、ジャッカルのような中学生らしい中学生は新鮮だ。……まあジャッカルも中々に大人だが。

「さぁて………暇だな」

コートの周りにいる観客達が今までよりもはるかに大きな歓声を上げたのは、私が中庭に到着した数分後の事だった。





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柳side

「柳先輩!待ってましたよ」
「ああ赤也か。ちゃんと練習してたか?」
「もちろんっスよ!………って言うか、幸村部長と真田副部長がいたらサボりたくてもサボれませんて」

げっそりとする赤也の頭をポンと軽く叩き辺りを見渡す。
準備を終えた氷帝陣が部室から出てきたようで、同時にフェンスの外の観戦者達の声が一気に高まった。…だが、それに若干眉を寄せる人間が数名見られた。

「チッ………黙って見てらんねぇのかよ」
「赤也」
「だってうるせぇんすもん」

氷帝・立海の全国区の強豪選手達が一気に会するとコートはなかなかの迫力だった。
口を尖らせフェンスの外の人だかりを睨む後輩の姿を見ると、ふと最近赤也が気に入っている彼女が学校に来ている事が頭に浮かんだ。

「………そういえば赤也」
「なんすか?」
「今日は怜を連れてきた」
「………は?」

俺よりもいくらか背の低い後輩を見下ろすと、ポカンと口を開き目を見開いていた。

「え……え?えええ!?師匠来てるんすか!?」
「ああ」
「あぁ、風篠ならさっきドリンク買いに行った帰りに会ったぜ」
「ジャッカル先輩ずりぃー!」

どこっスか!?と言いながらフェンス外の人間を端から見ていく赤也。
大して変わらないだろうに背伸びまでしている様を見ているのは中々面白かったが、いくら探してもいないであろう人間をいつまでも探させるのも可哀想だったので目的の人物のいる場所を教えてやった。

「怜なら中庭の方に向かってたな」
「後で顔を見せに行ってやったらどうだ?」
「モチロン会いにいきますよ!」

そう言うと赤也はよっしゃ!と張り切って素振りをしだした。
やはり赤也は扱いやすいな、なんて思ったがそれを口に出すような馬鹿ではない。
さて……と氷帝のメンバーを端から順に見回した所で、精市が練習開始の声を上げた。

「それじゃあ皆、始めるよ」







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日吉said

さすが王者立海と言うべきか、練習メニューは氷帝に勝るとも劣らないハードなものだった。
暫く練習を続けると、幸村さんと跡部さんから混合試合のチーム分けをするために30分間の休憩を告げられた。
俺は顔を洗おうと部室横の水道に向かったが、既に他の人達でいっぱいになってしまっていた。

「ちっ…」

流れる汗が気持ち悪い。
俺は別の水道を探しに向かった。







俺は幸村さんに別の水道がないかを尋ね、教えてもらった中庭へと向かっていた。
暫く歩くと中庭が見えてきてそこに設置された水道も視界に捉えられた。
さらに近づくと、どこからかギターの音と歌声が聴こえてきた。
実に上手い……いや、実に美しい歌。
今まで聞いた事もない程美しいその歌声に聞き惚れながらも音の発信源を探す。すると、一本の木の上に1人の女がいる事に気がついた。
その女とふと目が合った。歌声とギターの音が止まる。

「……ん?」

訝しげに俺を見る女はしばらく何かを考えるように顎に手を添え黙り込み、再び此方を見てこう言った。

「……隣、座る?」
「いや無理」







出会いは突然に

なんでこいつ木の上にいるんだ?



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