11

カーテンの隙間から射し込む光で目を覚まし、一気にカーテンを開ける。窓からは眩いほどの太陽の光が降り注いでいた。
起きてすぐに携帯を弄るのは私の癖だ。
いつものように片手で、慣れた手つきで液晶を撫でていく。すると、ふと表示される数字に視線がとまった。

「………あ」

とりあえず、今日は4限目からの出席になりそうだ。






学校。

「……なあ風篠、先生前にも言ったよな?遅刻する時はきちんと学校に連絡しろって」
「はあ」
「…じゃあなんで守れないんだ…っ!」
「さっきまで寝てたんで」
「……うん、もういいや、分かった。……席に戻りなさい」
「へーい」

丁度担任が担当している授業の時に教室についた私は、到着するなり担任の山寺、通称山ちゃんの説教をくらうはめになった。
クスクスという笑い声が微かに聞こえる中自分の席へ向かう。
クラスの皆も段々私に慣れてきてくれたなぁ…なんて考えながら回りを見渡すと、私はその時やっと席が変わっている事に気づいた。

「あ風篠、今日席替えしたんだ。お前の席そこなー」

………。
は?

「や、変わってねーじゃん」
「ビックリだな!だがくじ引きの結果だ。文句なしだぞー」

私の席は相変わらず窓際の一番後ろ。四角形から一つだけ飛び出した位置の席だった。
……というか、これも今気づいたが前の席がジャッカルだ。

「よろしくな風篠」
「おーよろしく桑原君」
「ジャッカルでいい。皆そう呼ぶからな」

ジャッカルは爽やかな笑顔でそう言った。
……ジャッカル、結構好きなんだよなぁ。

「そうだ風篠、朝赤也がお前の事探しに来たぞ」
「…切原少年が?」
「ああ。なんでも『俺はあの人の弟子になるんだっ!』とか」
「……そ、っか」

授業終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

「(風篠って案外話しやすいんだな)」





昼休み。
私はいつもの如く屋上へ向かう事にした。
荷物とギターを持ち教室を出る。
廊下では青春を謳歌している少年少女達が行き交っていた。

「あっ」
「?」

その時、聞き覚えのある声が何かに気づいたような声をあげるのが聞こえた。そうまるで探していた人間が見つかったときのような。

「風篠せんぱぁぁぁい!!」
「ぐふっ!」

誰かが背中にタックルしてきた衝撃を覚え、倒れそうになるのをこらえて振り向く。
そこには彼がいた。

「き……切原少年じゃないか」
「はい!いや、赤也って呼んでくださいっス!」
キラキラと輝く瞳をこちらに向ける子犬のような少年は、いつか見たあの幻の尻尾を私に向けて振っていた。

「なんで君がここに?」
「オレ朝からずっと探してたんっスよ!」
「私を?」
「はい!」
「……どうして?」
「風篠先輩、いや師匠!オレを弟子にしてください!!」

腰を直角に折ってバカデカイ声で叫ぶ切原。
おいおいおいおいここ廊下なんですけどおおぉ。
チラッと回りを見てみればやはり周囲の人間は大方こちらを見ていた。
ちょ、マジでやめて見ないで本当。
見せもんじゃねえぞ!と怒鳴ってやりたいところだがここは我慢だ。

「うん、とりあえず屋上行こっか」





場所を屋上へと移した私だが、もはや切原と弟子がなんたらという話をするのは面倒になってきていた。
尻尾を振り続ける切原を適当にあしらい音とギターの準備を始める。

「いや〜あんとき颯爽と現れてオレを助けてくれたときの師匠、マジでかっこよかったっスよ!」
「いつ私が君の師匠になったんだよ」
「えぇ〜?いいじゃないっすか」
「だいたい何の師匠だよ」
「……心の?」
「あっそ」
「うわっ、そりゃ酷いっスよ〜」

情けない声を上げる切原はやっぱりワンコみたいで可愛かった。やっぱり2年キャラはいいな。
初めて会った時に思いっきりガンとばされた事は忘れてやろう。

「師匠ってギター弾くんスね」
「まあね。ってか師匠呼び定着させるつもりかよおい」
「もちっス!」

ポロンポロンとギターをはじきながら回りのスピーカーやらなんやらをもの珍しげに眺める切原。興味あるのだろうか。
準備が整い、さあいざ始めようとしたその時だった。

「おっいたいた!赤也ー!………と、誰だ?」
「あ、丸井先輩だ」
「……」






現れたのは

まったく最近の中学生は銀やら赤やらと頭が派手だ。
………ああ、私も最近の中学生だ。





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