24話
「ぐす……」
鼻をすする音が聞こえる。
俺はその音のする方に向かって足を進めた。
『……いた。』
少し行った人目のつかない曲がり角で膝を抱えるサンジ兄の背中が見えた。
『サンジ兄』
「うわっ!!」
突然声をかけられた事に驚いたのか膝に顔を埋めていたサンジ兄は肩を跳ねさせあわてて涙をぬぐった。
「どどどうしたんだ!?アクリ!!何かあったか!?」
慌てて振り向きながら無理矢理笑顔を作るサンジ兄に俺は眉を寄せた。
『……………………』
その笑顔はいつもの曇りのない笑顔ではなく、俺は内心この笑顔を曇らせたコックどもに本気の殺意を覚えた。
『サンジ兄。』
「?なんだ?」
『俺もあると思う』
「え……」
唐突に告げた言葉にサンジ兄は目を丸くした。
『俺もあると思う。《オールブルー》』
「っ!」
そう告げてみるとサンジ兄の目はみるみる見開かれていった。
『誰も見たことがないのはないからじゃなくて誰もまだ、見つけられてないからだ。誰も世界のすべてを見てきた訳じゃないんだ。きっと、どこかにあるはずだと…………俺は思う』
そういうとサンジ兄の見開かれていた目からボロボロと透明の玉のような涙がこぼれ落ちていった。
『サンジ兄、だから泣かなくていいぞ?サンジ兄は間違ってないんだから』
どんな夢を持とうが自由だ。
誰かに強制されて諦められるようなものじゃない。
俺はそんなサンジ兄の頭を背伸びしながら撫でた。
24話