Last*Lost
10
それはまるで重い運命を背負い短い命を失おうとしている彼女のように
十字架は火に飲まれ、もちろん彼女も飲みこまれ
最後には灰しか残らなかった。
この灰も見せしめとして川に流されることになるかと思うと胸が痛んだ。
「俺は、馬鹿なんだろ? な。
こんなことするために争ってんの…本当馬鹿みてぇだ」
イギリスは空をみた。
彼女も最期はずっと空をみて微笑んでいた。何を考えていたかはわからない。だが、涙が頬をつたっているのにとてもきれいに微笑んでいたことだけが印象に残った。
ジャンヌは灰になりどこかの川に流された。
俺がついたときにはもう遅く、やりきれないままイギリスの野郎の胸倉を掴んで何度も何度も強く殴った。
あいつは何も言わず、ただ俺を哀れむ様な、決して蔑みは含まない、ただ哀しいそれだけの目で俺をみていて、
ただ、最後に一発強く殴り返された。
やけに殴られた頬が痛かった。触れると流れた涙が傷に触れてしみていたようだった。
そして俺は今、セーヌ川の前に花を片手に立っている。
あれだけムキになって走って泣くなんて、その上無駄だったなんて。
悲しみが胸を圧迫する。
君を失うのが怖かった。
後の喪失感が落とし穴みたいに心を喰っていった。
川は、セーヌ川であればいい。
俺の涙と君が流れる
そんな川でこの悲しみも押し流して欲しい。
「せめてもの手向けになりますよう」
花を投げ入れた。
花は脆く崩れ花弁がぱらぱらと流れに飲み込まれていった。
『笑った方がいいですよ』
不意にあの声が聴こえた気がした。
「空耳でも、
その言葉には 指切りするよ」
… END …
← ■ →
▲