静かに言ったレイチェルの言葉を聞き、満足げに魔女は頷いた。

「これで、最後ね」
「えぇ、そうですわね。でも、結末は分かっていますわ」

 レイチェルはするり、と指を組む。うっすらと汗をかいた額はきらきらと光っていた。薄く色づいた唇をそっと開く。

「引き返すなら、今ですのよ」

 まるきり、魔女とレイチェルの立場が逆転していた。
 魔女はゆるりと首を振り、申し出を拒否する。

「もういいのよ。これで、満足なのだから」

 そう言って彼女はカードに指を伸ばした。レイチェルも薄く微笑みながら、手を伸ばした。
 魔女が一枚ずつカードを開示していく。
 ハートの8、スペードの8、クローバーの8、ダイヤの8、ハートの3。四枚が同じ数字で揃えられた手札。

「フォーカード、ね」

 ほう、と魔女が溜息とともに呟いた。ノーチェンジでこれが揃うことは約四千百六十五の一。まさに、幸運だった。

「素晴らしいですわ……」

 レイチェルは心底、惚れ惚れと呟いた。この魔女は間違いなく、賭けの名手だ。
 だからこそ、ゆっくりとカードをめくっていった。
 現れたのは、スペードの2。

「まるで、剣のようですわね」

 ぽつりと言ってから、もう一枚、めくる。ハートの2だ。
 そして、間断なくもう一枚をめくった。
 ダイヤの、2。
 ごく、と喉が鳴る。それがどちらのものだったかはわからない。
 レイチェルの指がさっとカードを表に返す。
 そのカードを見て、さっと魔女の顔色が変わる。

「フォーカード……!」

 低く、魔女は呻いた。
 まさかここで同じ役が揃うとは思わなかった。だが、魔女は浅く息を吐く。
 同じ役の場合は、数字が大きい方が勝つ。
 レイチェルの揃えたフォーカードは最弱の2だ。

「私、ここで負けるわけにいきませんのよ……!」

 レイチェルは低く、叫んだ。
 同時、最後のカードを裏返す。
 そこにあったのはジョーカー。
 最弱が作る、ファイブカードの完成だった。





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