V
注文を終え、頼んだ品を待つ。
すると、健太郎先輩が見慣れた弁当包みを取り出した。
「家で渡すべきだったと後悔してるけど‥…
今日もありがと。美味しかった。
それから‥…」
机の上に置かれた弁当包みの横に可愛らしくラッピングされた袋を置いた。
「これ、クリスマスプレゼント。
気にいるかどうか分かんないけど」
「‥…!!ありがとうございます!
私からも」
急いで鞄の中からプレゼントを取り出すと健太郎先輩は笑った。
「そんな気を遣わなくてもいいのに‥…
でも、嬉しい」
「それは私のセリフですよ‥…!
あの、開けてみてもいいですか?」
もちろん、と頷いた健太郎先輩。
可愛らしくラッピングされた袋が破れないように注意して開く。
「これは‥…」
中に入っていたのは髪ゴムとシュシュのセットとハンドクリーム。
「霧姫、最近髪の毛伸びたなって思って。
本当はアクセサリーとかが良いのかもしれないけど、俺今まで買ったことなくて何がいいか分からなかったし‥…ちょっと恥ずかしくて。
ハンドクリームはいつも弁当を作ってくれるお礼。
水仕事は手が荒れるだろうから」
きっとこれらを買うのも勇気がいることだっただろうに‥…
シュシュの色は濃い緑。
霧崎バスケ部のユニフォームと同じ色。
こんな小さなことでさえ、彼があのチームを愛していることがよくわかる。
「健太郎先輩」
きっと先輩が今から言うのは
"気に入らなかった?"
だからその言葉が出てくる前に
「大好きです」
胸元にプレゼントを抱き、これ以上ない笑顔でそう伝えた。
(健太郎!!チッ‥…どこ行きやがった)
(瀬戸ならさっき"眠いから帰る"とか言って出て行ったぞ)
(素直に彼女ちゃんの所に行くって言えば可愛げがあるのにね〜)
END