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「健太郎先輩‥…?健太郎先輩!!」


気がつけば霧姫が精一杯背伸びして俺の目の前で手を振っている。
背伸びしてやっと俺の顔に手が届く位の大きさ。
なのに一生懸命に気を引こうとする彼女が可愛くて仕方がない。

もう少しその姿を見ていたかったけれどそろそろ返事をしてやらないと本気で何をされるかわからない。


「あ、ごめん。
ちょっと考え事してたよ」

「ビックリしましたよ、ついに立ったまま寝る技を会得したのかと思いました。
それでですね‥…」


楽しそうに今日の出来事を話す横顔は"あの時"よりずっと近くて。
真っ直ぐに俺を見つめる顔を見ると抑えつけている欲望が弾け飛びそうで怖い。

今までの女たちとは違う真っ白な霧姫。
そんな彼女を痛みや恐怖で蹂躙するわけにはいかない。
無意識に触れたいと思う自我を彼女を大切にすると決めた理性で繋ぎ止めていた。

花宮は気づいているようで俺に憐れみの目を向けるようになっている。

‥…まぁ正直、いつまで保つかわからないけど。


「霧姫」

「はいっ!」


楽しそうに笑う彼女がずっと側にいてくれたら、なんてガラにもなくそう願った。

END

祝★1周年!!
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