壱
目が覚めると深い暗闇の中にぽつんと一人だった。
手も足も動かない。
頭も思うように働かず"ぼー"っとしてしまう。
気だるい意識で目線を下げると茨に絡みつかれた自分の足が見えた。
「結局お前にはここにしか居場所がないみたいだな」
「‥黙れ」
暗闇に浮かび上がる一人の男の姿。
憎い賊の頭だ。ニヤリと卑しく笑うと私の顎に手を這わす。
「楽しかったか?長曾我部との恋人ごっこは。
まぁお前みたいな殺戮兵器の相手なんて面白くなかっただろうがな」
意識が上手く保てない。
深く食い込んでくる茨が痛みを訴える。
「血にまみれたその手で誰を守れる?
家族も守れなかったお前が」
「もう闇に身を委ねてしまえよ。
もう二度と苦しまずに心地よい気分で過ごせるぜ?」
「俺はお前の力も自身も愛してやるぜ‥?」
目の前で甘い誘惑の言葉を囁く男。
強く引きこもうとする茨は全てを覆い尽くそうと私を包み込む。
虚ろな目に一筋燃えるような光が見えたような気がした。