壱
つかの間の安息はあっという間に過ぎていき平穏な日々は長く続かない。
「アニキ大変ですぜ!!」
「どうした?毛利の野郎が攻めてきたか?」
「いえ豊臣の軍勢がこちらに向かってるみたいです!!」
「‥…豊臣が?」
豊臣秀吉。
圧倒的力で逆らう者を捻じ伏せ、天下統一を狙う大将。
あらゆる方法で南や北の勢力を抑えているのは同盟国である奥州の政宗殿から聞いていたが‥
(まさか同盟を結びに‥?それとも狙いは富嶽なの?戦の準備だけはしておくべきか‥)
「いつでも戦えるように準備を。
皆に伝えて。急で悪いけど支度をお願いって」
「了解ですぜ、アネゴ!!」
急いで走り去っていく部下の背を見つめながら考える。
何かがおかしい。腑に落ちない。
毛利と豊臣が手を組んだのはこの前の報告で聞いている。
けれど毛利はつい先日単体で攻めてきた。
その時の傷がもう癒えたとは考えられない。
「元親、政宗殿に書をお願いしていい?」
「おうよ。‥腑に落ちねぇな」
「うん。なんで今攻めてくるんだろう」
元親を見ると眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。
政宗殿から届いた文には豊臣秀吉が攻めてきた事、それで政宗殿が酷い怪我をおった事‥彼の右目でもある片倉小十郎‥通称こじゅさんが豊臣に連れ去られたことが事細かく書いてあった。
(こじゅさんがまで攫って何を考えてるの‥)
「難しく考えても仕方ねぇか。アイツらが攻めてくるなら迎え撃つだけだ」
「そうだね」
側に置いていた刀をそっと撫でた。