正直、確信はなかった。
もし今霧姫が言ったことが本心なら俺は彼女を傷つける事をしてしまうだろう。
けれど、こんな茨に包まれて傷つきながら心を失い、ただ殺しをするだけの人形にするわけにはいかない。

「例えお前が嫌っても俺は霧姫を求めるぜ。
何度拒絶されたとしても、な」

そう言って成長し続けている茨の側に行く。
鋭い刺とまるで鎖のように太く黒い蔦。

「こんなもん似合わねぇ」

霧姫にはもっと違う色が似合う。
俺の好んで身に付ける赤紫や海や空の色だって似合うだろう。
普段から動きやすさ重視で服装を決める霧姫には着物を贈ったことがない。
おいおい贈ろうと思っていたが、これで決心がついた。

「霧姫。戻ったらお前に着物を着てもらうぜ。何度嫌って言っても聞かねぇからな」

いつも霧姫と話すときのように笑みが自然と浮かぶ。

虚ろな目はまだ俺を写してくれない。

そっとその頬を撫でるように手を添えた。
‥仄かに感じるぬくもり。

「‥すぐに出してやるからな」

絡みついている茨を掴む。
思ったよりも鋭く手に血が滲んだ。
鈍く痛みを訴える手を無視して茨を引きちぎる。

彼女の身体を見ると茨の鋭い刺で傷ついたのか、服が破け赤い筋が覗いている。

ぐっと奥歯を噛み締め手に握った茨に力を込めた。






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