「てめぇが竹中半兵衛か。
さっさと何しに来たのか言いやがれ!」

「僕も君と遊んでいるほど暇じゃないんだ。
本題に移ろうか‥率直に言うよ。
君の後ろに控えている少女を豊臣軍に献上しもらいたい」

竹中の鋭い目線が元親を通り抜けて私に突き刺さった。
元親もこの展開は予想してなかったようで目を見開いて言葉を無くしていた。

「その少女‥聞けば片倉くんと同じ策略家らしいじゃないか。
その力、世界を目指す秀吉の為に使ってもらいたい」

「‥…元親」

ぎゅっと元親の羽織を掴む。
ここで竹中に斬りかかったとしても勝てる見込みはない。
私は今、何もすることができない。

それが悔しくて奥歯を噛み締めた。

「生憎、コイツは俺のもんだ。
献上するつもりも奪われるつもりもねぇ」

竹中以上の鋭い目で元親は答えた。
さり気なく私を豊臣の軍勢から隠すように背中で庇ってくれる。

「僕は元親くん、君に話しているんじゃない。
その後ろにいる少女‥狼族の生き残り‥
雨宮霧姫に話しているんだ」

嫌な感じに心臓が跳ねた。
刀を握っている手がじんわりと汗ばみ、呼吸が荒くなる。

何故、私の一族のことを‥…?






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