* 岩泉一 × 晴れ女 *
“明日は晴れますように_____”ついに気象庁は梅雨入りを発表した。
今朝から雲行きは怪しく、午後から雨だと言っていたし、週間予報もほとんど灰色の雲と青い傘マークばかりが並んでいた。
現代の雨雲レーダーは優秀だ。
今日明日の予報くらいなら、降り始める時刻までピタリと当たる事が多い。
きっと今日も帰る頃には雨で地面が濡れているだろう。
そんな天気にちょっとだけ反抗してみる_____
〜:〜:〜:〜:〜
「……出来た」
部室でもある調理室に1人。
窓際まで椅子を引っ張り、私はその上に立っていた。
シトシト…と静かに降る雨を窓から見つめるのは、私とカーテンレールにぶら下げられたてるてる坊主。
てるてる坊主なんて作ったのはいつ振りだろう……?
こんな子供じみた願掛けをするなんて。
そう、誰かに笑われても、私は晴れて欲しい理由がある。
調理室の窓から見えるグラウンド。
そこには多くの部活が汗を流し、練習をする姿が見られるが、雨が降ってしまうと当たり前だが人っ子ひとりいなくなる。
それは普段グラウンドを使用していない、屋内運動部の人達のロードワークも見られなくなる訳で……。
クラスが違う彼を見る唯一の手段を失う事になる。
私は椅子から降りるとてるてる坊主に向かってパンッと手を合わせ、頭を下げた。
「明日は、晴れますように」
〜:〜:〜:〜:〜
翌日。
ずっと降り続いていた雨は次第に止み、授業が終わる頃には晴れ間が覗いていた。
教科書で隠す口元に笑みが零れる。
しかし喜んでいるのは私だけだ。
「あー…雨上がっちまったな」
「地面が緩い時のロードワーク程不快なものはない」
そんな声が廊下の至る所から聞こえる。
アレだけが原因だと思ってはいないが、水溜りだらけの中、走る人の事を考えたら何だか申し訳なく思えてくる。
“……やっぱりあのてるてる坊主、外そう”
私は足早に調理室へと向う。
「!」
すると目の前から憧れの彼が歩いてきた。
きっと彼もすれ違った人達と同じ事を思ってるに違いない。
私は間近で彼を見れるチャンスを自ら駄目にするよう、俯いて通り過ぎようとした時。
「あのてるてる坊主、スゲェ効果あんのな」
「ッ」
去り際に聞こえた彼の声に思わず足が止まった。
恐る恐る振り返ると、彼もまた足を止め、こちらを向いていた。
「俺は雨上がってくれた方が助かるから」
ニッと唇の両端を横に引っ張り、あどけない笑顔を残して彼は立ち去っていく。
彼に声を掛けられた嬉しさと共に、あのてるてる坊主を吊るしている所を見られた恥ずかしさが込み上げ、私はその場に蹲ってしまった。
“てるてる坊主様、彼の為にも明日はずっと晴れますように_____”
……そんな小ネタ←雨女があるなら、晴れ女もあって良いと思う
何の進展もなく、片想いっていうシチュエーションも良いかと思います、えぇえぇ
風邪のせいで味覚を失い、何を食べても美味しくない……それなのに食欲ばっかりあって何やら食べ損的に思えて仕方ありません
今日も雨のせいで室内の空気はひんやりとし、モケモケのパーカー羽織って過ごしてました
……良かった、まだ冬物しまってなくて…←
皆様もお風邪や熱中症等、お気を付けてお過ごし下さいませ
2015/06/09
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