薔薇と十字架


煌煌と眩い光を受けて
グラデーションに並べられた薔薇が
凛と立つ
近寄りがたいその神々しい姿に
思わず目を背けるのは
心に
十字架が重く重くのしかかるからだろうか
 
 
 
 
 
人は言う
薔薇色の人生

 
 
 
まるで焦がれても焦がれても
手に入らない
憧れの夢を見るように
うっとりと口にする 
 
 
 
薔薇色の人生って
いったいどんなんだろう
 
 
 
 
 
甘くて甘くて
蝶が誘惑される
蜜のようなものだろうか……
 
ふわふわと漂う雲のように
儚く繊細な
夢のようなものだろうか……
 
 
 
 
 
それは
いったいどこで手に入るものだろう……
 
欲しいと願えば
雨のように降り注ぎ
大地を潤すように
心も満たされるのだろうか……
 
 
 
 
 
ああ……だけど
その心に刺さる十字架は
重く深く
眩い光を放つその薔薇を手折ることはできない
手折った瞬間に
その輝きは失われて
体の果てから涙を流しきるかの如く
その生を削り
やがてぱらぱらと音もなく手のひらから消えて逝き
そうして残るのは
暗黒の世界に
十字架が一つ
 
 
 
まるで
誰にも気付かれないように建つ墓標のように……
 
 
 
 
 
ねぇ
薔薇色の人生って
どうしたら手に入るの?
 
そう……
 
人生ってゲームをクリアして行けばいいの? 
 
 
だったら早々リタイアした人間には一生縁がないのかな……
 
 
 
その薔薇は手折れないけれど
その十字架は延々と重く深いけど
 
 
 
黒い薔薇に包まれ
濃厚な香りに酔って
 
これもまた薔薇色……



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