絶えないケンカ
「やめとけよって言ったんだ」
いつもの露伴なら…やれるもんならやってみろとか、ムリだって言うとしてももっとねちっこいはずだ。それが、一言だけで。がりがり走らせていたえんぴつまでも置いて、こっちを見ている。
『な、なんでだよ』
「きみは僕とずっといっしょなんだろ。僕が絵をかいてお金かせぐから、幸彦はご飯作ってくれよ」
『……んなカセーフみてえなことやらせんなよ。おれだって男なんだぜ、自分のメシ代は自分でかせぐからな!』
どなってからここが図書かんだということを思い出してあわてて口をふさいだ。他の人たちはびっくりしておれたちを見ていたけれど、すぐに自分の手元の本を読みはじめたみたいだ。
『と……とにかくよお〜、おれはおれのやり方でやってくからな。お前にたよらなくても生きられる』
ひそひそ話をするときのしぐさで、露伴だけに伝わるように言う。いくらいっしょにいるからといっても、やっぱりセンギョー?シュフ?あつかいは男がすたるってもんだ。
「……僕といっしょにいたくないのかい」
急に露伴がフキゲンになった。なんだこいつ。
「フウゥーン、なら一生一人でさみしく安いアパートに暮らせば良いじゃあないか!いっておくが約束をやぶったのはきみだからな!?僕はいっさいきみに関わらないしきみも僕を見ても話しかけるなよ!じゃあな!」
……めんどくせえなこいつ!
『おれがいつお前といっしょにいないなんて言ったよォ!?』
大声でしゃべりながら席をはなれようとするそいつのかたをつかむ。露伴はうっとおしそうにおれの手をつかんで引きはがそうとしてきた。
「っの………じゃあなんで自分でかせぐなんて言い出したんだよ!」
『そもそもおれの夢の話じゃあねえのかよスカタン!!』
「自分一人で生きていけると言ったのはこの口だろうが!!」
口の中に両手をつっこまれ、ぐいっと右と左にひっぱられる。
『んあっ(ンなっ)!!ひほおほろはへーふあうあいひあのあおっひざあれえか(人のことカセーフあつかいしたのはそっちじゃあねえか)ッ!!』
「何言ってるかゼ〜ンゼン分かんないねえーッその口じゃあなあーッ!」
「ちょっと君たち」
『「あ」』
『っつーことがあってよお〜露伴ってワガママだよなあ〜』
自分のいすのせもたれをがっちりホールドして、後ろの席のイイダくんに(ずっとおれのほうから)話をする。あの後司書さんにおこられてつまみだされたまでがオチなんだけれど、はじめは「キシベくんもたいがいだなあ」なんて笑っていたイイダくんは、話がすすむにつれてだんだんと変な顔をしはじめた。
「………………………ん?おまえらケッコンのやくそくしてんの?」
『男どうしでケッコンできるかよアホ』
ますます目と目の間のシワが多くなる。たしかそれ、大人になってからこびりつくヤツじゃあなかったっけ。今からシワつくってどうするんだ。
「……露伴となかなおりしたのか?」
『そりゃもちろん、れいせいになりゃあせつめいも聞いてくれたぜ』
そうか、と言ったところでイイダくんはため息をついた。実はこれがようちえんから今までで初めてイイダくんにつかれたため息だったりする。ちょっときずつく。
「まあ、むずかしいこととかよく分からんが……がんばれよ」
うんざりしたような目で見られたが、そんなものでめげるようなおれではないのだ。
『ああ!がんばっておれの夢、見つけるぜ!』
にっかりと笑ってやったら、(なんとなくぎこちない感じだったけど)笑い返してくれたのでまんぞくだ。
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無理矢理纏めた感とかありませんし……prev|next
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