君と未来を歩む | ナノ




あさってからおれ達は




朝の6時。布団を出て着がえた後歯をみがき、顔を洗ってかみの毛を整える。この時にビシッ!!っと音が鳴りそうなぐらいにするのがベスト。

一階に下りたらお母さんが焼く卵のにおい、に負けずに椅子の上のランドセルをつかんでかがみの前へ。いつも出かける前にお母さんが使っている大きいもので、おれの姿はヨユーで映る。

まずはうで組みして正面。次、こしに手を当てて横をチェック。最後にうしろを向いてマッスルポーズ。せっかくのかっこよさをだい無しにしないように、チェックする時は目だけをかがみにやるか、ふり向いても決めポーズ。ここさいきんはその後に、おかあさんから一言かけられる。


「幸彦、学校は明後日からよ」
『知ってる』
入学式でわいるどにとうじょうするためだと言うのに、「そんなナルシストみたいなことしてないで、早くご飯食べちゃいなさい」だもんなァ〜。





「……幸彦。一つ、いや二つほど質問していいかな?」
『入学式があさってってのは知ってるし、露伴のところ来たのはひまだったからで、このランドセルにはお母さんに持たされたおかしが入ってる。さあどれだ』
チャイムをならす前に出てきたそいつはものすごく目を細めたあと、最初と最後だと言っておれを家の中に入れた。

『ところでさぁ、なんでピンポンする前に分かったの』
「僕の部屋から見えた」
なるほどだった。




持ってきたドーナツを食べながら、おれはつくえの下でたいいくずわりをしている。
きょうの遊びはかくれんぼ。今おれがいるのは、重いドアを開けたさきの………なんだっけ、本だながたくさんあるところだ。

ぶ厚いとびらのおかげか、それともこの部屋が音をさえぎるようになってるのか、上の部屋で数を数えているはずの露伴の声は聞こえない。もうそろそろ100たったかな。
それにしてもしずかだな。露伴が来るまでちょっとここの本をよんでみるか。

(なになに……の、すとらだむすの……よく分かんねェな。こっちは……オッ009かあ。お父さんがもってたな)

ぱらぱらとマンガだけを選んでよむうちに、だんだんとねむく……なって……












露伴がランドセルをしょっている。なんだおまえ、入学式はあさってだろう。
声をかけようとしたら、目のはしにひらりとピンク色の何か。
あわてて周りを見てみればそこは、さくらの花びらでいっぱいの小学校。なんだもうあさってになったのか?
露伴をもう一度見る。そいつはあの人をバカにしたような笑顔で手を引いてきた。
そんなに急かさなくてもいいんだけどなあ。

「おォ〜い?幸彦君、こんな所にいたのか」
この学校のこう歌、昨日のうちに覚えとけばよかった。露伴は平気な顔で歌っているのに。あ、かしカードかしてくれるの?
「おうい、起きなさい」
なんだ、なんだ、きゅうに地面がゆれ出したぞ。じしんか?
「もうすぐ夕飯の時間だってさ。どうする、ウチで食べてくかい?」
ゆうごはん?今はそんなばあいじゃ、あ、でもおなかが空いたな。

『た…べ……る』
「そうかそうか。それじゃあ君んちの奥さんとうちのママに伝えておくよ」

そう言って、露伴のお父さんは本の部屋を出ていった。なるほど、おれはねていたんだな。下を向くと、もうすぐでよだれが本につきそうだった。あぶねえな。
たぶん露伴のお父さんは、おれをゆり起こしてくれたんだ。さっきのは全部ゆめか、でも露伴との入学式はたのしいだろうな。あさってからおれたちは小学生、今からわくわくしてきた。



出した本は片付けて、今日は露伴の家でごはんをたべることになった。…………ろはんとごはん、か。
「言っとくけどさあ、ろはんとごはんとかしょーもない事考えてたら」
『よくわかったな』
ため息の後にチョップされた。たしかに今のギャグは減点だな。

『露伴』
「なんだよ」
二人で手洗い場を使っているとすごくせまいな。いつもよりもとなりが近い。
『さっき寝てたときさ、おまえといっしょに入学するゆめを見たんだ』
「……僕が必死で探してたって言うのに、きみってやつはさァ〜」
『まず言うことがそれかよ。ごめんなって』
はああ、と今日一番に長いため息。だからごめんなって。

『でな、ランドセルしょってるおまえに手を引かれるんだ。それから体育かん行って、歌を歌うんだ』
露伴のお父さんに起こされるまでのゆめを話す。すると露伴はぐ、と声をつまらせて(たぶんため息をがまんしたときの動きだ。幸せがにげるもんな)それからゆっくり呼吸した。


「……僕と入学するのはもう分かりきったことだろう」
『たのしみだったんだろ、多分』
「夢に見るほどか」
ちょっとだけそいつは笑って、タオルで手をふきはじめた。おれはじゅんばん待ち。

「僕も楽しみだよ」
『そうか』
二人でふふふと笑いあって、ごはんよと声をかける露伴のお母さんのもとにかけていった。






(そういやあの夢、露伴しか出てこなかったな)
(きみの夢にはやっぱり、僕以外もでたんだろうな)





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