君と未来を歩む | ナノ




仕込みの調子はどうですか



まずは風紀委員の先輩によく不良のたむろしている場所を聞き、次に誰それがその人たちに目をつけられているという噂を手に入れる。
露伴はちょくちょく自分を取り巻いている女子が口を滑らせ(中学に入ってもおれは一向にモテない。なぜだ)、更におれと二人で友人やその先輩達からも聞き込みをして回った。まるで刑事ドラマの主人公のようだと興奮していたら、露伴は残念なものを見るような目をした。


そうしたら次はセンパイ達の耳に届く範囲で彼らの神経に障るような行動を起こす。
例を挙げるといじめの最中に先生を呼んでくる、彼らの溜まり場の傍をうろつく、彼らを見かけたら姿が隠れるまでじっと見る。そして絡まれそうになったら即座に逃げる。


当然この目立つ行動は校内に広まって、面白そうに茶化してくるヤツや止めろと注意してくるクラスメイトが度々寄ってきた。勿論おれ達もこれが正義じゃあないことぐらい心のどこかでは分かっていたし、校外の不良にまで誇張されて広まっていたらリンチどころの話ではなかっただろう。
だけど噂で名前を聞いた先輩がガーゼを貼って歩いている姿を見たり、友人が絡まれそうになった話を聞いたりするうちに自分に奇妙な正義感が湧いたのだ。
当然周りを少しでも巻き込んでいる時点で全く正しいことではない。昨日も「西之谷幸彦のダチだな」と聞かれて路地裏に連れ込まれそうになったと太一から聞いた。

それでもまだ13年しか生きていない自分達には「本当の正義」なんてわからない。






「な、今日の難しくなかったか?」
チャイムが鳴ると同時に、前の席で消しゴムをいじくっていた七海がこちらを向く。
『どこがだよ』
「どこがってそりゃー………エーット」
器用に椅子を傾けて二本の鉄の足でバランスをとっているそいつは、暫くうんうんと唸っていた。次の授業までの時間は短いので、言葉を待つ間にノートと教科書を片付けておく。
「あ、ほら!プラスとマイナスかけたら二乗のマイナスなるヤツ!」
『そりゃ昨日の範囲だろ。今日の授業分も含めて後で教えてやろーか』
纏めた勉強道具を軽く机に打ち付けて整える。「マジ?良いの?」とあからさまに明るくなった声の方を見れば、友人の満面の笑みの度アップが視界一杯に押し寄せてきた。ちょっとビックリした。

『別にいいけどよ〜、ちょっち近いんじゃあねえの〜?かんばせ寄せ合うならカワユイ女の子としたいぜおれは』
手で相手の顔を制せば素直に引き下がってくれる。ついでに早く次の授業の準備をしろと促して自分も引き出しから国語の教科書を引っ張り出す。ガラガラと入り口の戸が開閉される音と、あちこちでクラスメイトの喋る声が良いBGMだ。
「でもさ、おめーいつも露伴とこんな感じの距離だろ?慣れてんじゃあねえのか?」
『流石に顔くっつくほど近くねえよ。トイレ行ってくる』
ほいほい、と適当な相づちに手を振って返し、戸を開けようとして─

─それは乱暴な音をたてて勝手に開いた。

「お!すぐココにいんじゃあねえかよォ」
下衆な声が教室中に響き渡り、反対にさっきまで朗らかにおしゃべりしていた同級生たちの声がピタリと止む。後ろを向かなくても分かる、驚きとちょっとした恐怖、それからほんのちょっぴりの好奇心を含んだ視線が突き刺さってくるのが。
十センチ近く上の方から、隠しきれないニコチン臭さと共にいやしい笑い声がいくつも降ってきた。
「西之谷幸彦クンだっけ?オレ達と遊びたいって聞いたんで直々にお迎えに上がりましたよ〜っと」
『あざっす、じゃあ行きましょうか』






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