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「時々こっち帰ってきて顔出しなさいよさいよ?バカなあんたでも、居ないと寂しいわ。」















…葉子。葉子、葉子。






気が付いたら私は葉子の腕を掴んでいた。


「何、可奈女?」

「私じゃ駄目なの?」

「え?」

「葉子の隣は私じゃ駄目なの?私より向井なの?」

「…何言ってんのよ、ちょっ」

「葉子…」






そして、葉子の唇にそっと自分の唇を重ねた。







甘い。甘い時間。このまま時が止まってしまえばいい。










しかし、次の瞬間に時はまた動き出した。



パァーンッと肌を弾く音が空に響き、右頬に激痛が走る。



「…最っ低。」



ただその一言だけだった。


葉子は目前とした家に向かって走り出す。


葉子は涙目だった。





レズビアンなんて報われない。






私は葉子に拒絶されたのにも関わらず、頭の中で冷静に思った。








◆◇◆







翌日になると、葉子に叩かれた右頬は赤く腫れて、今は大きな湿布に覆われている。


「卒業式当日になんてみっともない顔!ママは恥ずかしいわっ!」

「ママぁ〜酷いっ」


私はウ〜っと泣き真似をする。


「…可愛くありませんっ。今日はパパと二人で行くからね。それにしても、葉子ちゃん遅いわねぇ。」


いつもは葉子が私を迎えに来て、二人で登校していた。


「…ああ。来ないよ、多分。」

「ちょっと…あんたまさか葉子ちゃんとケンカしたんじゃないだろうねっ!?」

「…」

「もうっ!この馬鹿っ!」


ゴツンと頭にげんこつを食らう。


「…っ痛いよぉ〜ママっ」

「卒業式だってのに何でケンカなんてするのっ!学校で会ったら葉子ちゃんに謝りなさいっ」


いいっ!?と念を押される。


謝って許されるなら、とっくに謝ってるっつーの。



「ほら、遅刻するわよ?」

「はぁ〜い」


食べていた食パンを喉の通りが悪いから、無理矢理コーヒーでグッと流した。


 





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