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「敦士…俺ん家来る?」


俺にとって、この一言は大きな意味を持つ訳であって。




敦士はそれから数秒置いて頷いた。






ガタンゴトーン…ガタンゴトーン…





俺らは電車内、奇妙なくらい黙っていた。




鞄をカモフラージュに、その下でずっと手を繋いでいた。











駅を降りて、歩いて5分位の所に赤い屋根の白いアパートがある。


「ここ、今俺が住んでる所。」


「親御さんは?」

「いないいない。俺、一人暮らし。」


俺はヘラヘラと笑って答える。


「えっ!?」

「だって俺の実家、福岡だぜ?」


「知ってるけどさ、家族一緒にこっちに来たのかと思ってた。」

「ないない!こっち来たのも俺の我が儘だからね。俺一人のために家族は来ないよ。」


敦士は少なからずショックを受けているようだった。



「…俺、広道の覚悟とか全然知らなかった。」

「覚悟なんて大袈裟な。」

「…いくら鈍い俺でも広道の思いが分かるよ。」

「…何度も挫けそうになったけどな。でも、愛してるから。」

「俺だって、愛してるさ。…片思い歴は俺の方が長い。」

「え、なにソレ。」

「は、早く部屋入ろうよ!」


俺は扉を開けて敦士を上がらせる。


「ねぇ、片思いって」

「…広道はここで暮らしてるんだね。」

「うん。」


冷たいお茶を用意しながら片思いの話を詳しく掘り下げようとしたが、敦士は新居の方が気になるみたいだ。


「一人って寂しくない?」

「気楽だよ。」


俺の部屋は今の所、必要最低限の物しかない。

敦士はどうやら俺の部屋に夢中らしい。


俺はそんな敦士を後ろからそっと抱き締める。


「…ど、した?」

「い、や…何となく?」


 





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