重んだ不安
「永井って本当にバカだよなぁ〜」
「あぁ、俺もこんなバカな奴、初めて見た!」
「あのなぁ、お前ら!俺がバカなら山田の立場がなくなるだろっ」
「ぎゃはは!山田って誰だよっ」
「お前は自分のバカさ加減を自覚した方がいい。」
…酷い言われようだ。
櫻井と岸田がタッグを組むと最強だ。俺は馬鹿じゃないのに二人の話術に翻弄され、馬鹿にされている!
「おめーらっ!!一々うるっせーんばい!!」
「ぎゃあはは何弁だよっ」
「あーっははは、母国語出てんぞっ」
「…笑うなっ!!!」
俺の額に浮いた血管は今にもぶちキレそうだった。
「だって、お前…現国の時間に英語の教科書開いてずっと授業受けてたんだろ!?」
「挙げ句の果てに、古田に当てられて、英文読んじまうしな!古田顔ヤバかったぞっ」
「般若だったな」
あはははっ、とまた爆笑し始めた二人に俺の顔も赤鬼のようになる。
「もぉ、いい加減にしろよ二人とも。」
「敦士ぃ〜…」
俺は敦士に抱き付くとヨシヨシと頭を撫でられる。
「………お前らデキてるだろ。」
ドキッ!
櫻井は変なところが妙に鋭い。
「大体お前ら二人には、なんかピンクいオーラがあるんだよ。なぁ岸田?」
「うーん。俺は別に。…凄く仲良いだけじゃない?」
「そうそう!岸田の言うとおり!櫻井は考え過ぎなんだよ。禿げるぞ。なぁ、敦士?」
「…そ、だね。」
敦士は何だか元気が無かった。
◆◇◆
敦士と二人で下校中。
「俺らの関係って…やっぱり秘密だよね。」
「…どうしたんだ急に。」
「それとも広道にとっては、俺は凄く仲の良い友達なのかな。」
敦士はデカい体を前屈みに小さく折り曲げている。
「何言ってんだよ…あの時は、ああ言う他なかっただろ?」
何を考えているのかと思えば…
それが顔に出ていたらしい。
「…」
敦士は俺の顔を見て涙目になる。目が赤い。
「敦士、泣くなよっ!別に怒った訳じゃないからっ」
「…」
…困った。どうすりゃいいんだ。
俺はどうしたらいいか分からず、とりあえず敦士の肩を抱いてみる。
「…恋人の証が欲しい。」
「…んなモノ無くたって、俺らは恋人だろ?」
学校の最寄りの駅の方角と敦士の家の方角の境目に来る。
…こんな状態の敦士を一人にしていいものだろうか。
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