猛獣チワワ<3>






HRがもう直ぐ始まるっていうのに猛獣チワワの席はまだ空席だった。もしかしたら、今日は定期チェックと言う名の身だしなみ検査がある日だから欠席するつもりなのかもしれない。とは言ってもウチの学園の身だしなみ検査は、他校に比べて比較的緩い。

例えば、髪の色や長さは規定にないのだ。ただし、アクセサリー類の着用は禁止。男子校なのに、『化粧禁止』という項目があるのも我が校特有かもしれない。猛獣チワワに関しては全部引っかかる。と言うより、その話以前の問題だ。周りとは全く次元が違うのだ。

ウチのクラスのチワワ達も今日は化粧をとって皆すっぴんだ。でも、チワワ達は顔の素材がいいから、すっぴんでも充分可愛かった。むしろ、すっぴんの方が可愛いと思った位だ。
何というか彼らは化粧をすると若干ケバくなるような気がする。…そもそも男にする表現ではないけれど。


見た目がホストのような、教師にあるまじき形(なり)の担任が教室に入ってきたが、チワワはまだ来ない。
いよいよ欠席という可能性が濃厚になってきた。

てか、早乙女先生、教師の癖にいつもどおりアクセサリーをがっつり身に付けている。今日に限って胸元が大きく開いているシャツを着てるし。何かこれ見よがしだ。




先生がHRを始めようとした時、教室後ろの扉がガラガラと乱暴に開く音が響いた。
発信源に目を移すと、そこには見知らぬ男が立っていた。
クラスメートもその男に対してざわつき始める。


男は前髪オールバックで後ろにハーフアップに結われ、顔は眠気眼で無精髭を生やしている。制服はだらしなく着ていて、不機嫌オーラを存分に振り撒いていた。

その男は真っ直ぐに迷うことなく進み、予想外の場所に乱雑に着席した。

そこは今まで空席だった猛獣チワワの席だった。


…あなたは誰ですか。

いや、もう流石に分かってはいるのだが、ここまできて理解できない程馬鹿ではないが…それにしても別人過ぎるだろ。

あれは完全に男じゃないか。よく見ると顔のパーツ等は猛獣チワワなのだが、普通に小柄な男だ。てか、普段は髭生えてるのか。


猛獣チワワの出現に嬉々とざわめき出した生徒たちに早乙女先生が珍しく一喝し、一転とし静まり返った教室内で何事もなかったかのようにHRは始まった。


HRが始まっても俺の目はずっと猛獣チワワに釘付けだった。

内心、気付かれるかもしれないと危惧して目を反らしても、また猛獣に視線が戻ってしまうのだ。同時に心臓がドキドキと煩く拍を打つ。

キュウっと締め付けられてむず痒い感じがする。…何かの病気だろうか。








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