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「…声、震えてんぞ。」

やっと応答してくれた声は驚くほど静かだった。温度も抑揚もない声。小町が嘲笑を浮かべ、長い足を組む。これがあの誰にでも隔てなく優しい王子様かよ。全く持って詐欺じゃねぇか。

「誰のせいだよ…」

「意味分からん。要点を簡潔に言えよ。」
唾液を飲み下せなくて喉が詰まる。鼻の奥がツンと痛んだ。

「お前、何え、何で俺のこと嫌いなん、だ。」

「声震えすぎ、噛みすぎ。かっこわり。」

「うるせぇっ!」

思ったより大きな声が出てしまい、慌てて咳払いで誤魔化した。再び顔の毛穴から汗が吹き出る。喋る声が調節できなくてもどかしい。

小町は対称的に涼しい顔をしていた。窓から吹いた生暖かい風が小町の短めの金髪を靡かせた。

「…そうだな。お前の全部が嫌いだよ。俺がお前の仲間だと思われていると思うと虫唾が走るね。」

ソファから立ち上がり、俺より少し身長の低い小町はまるで唄うようにさらりと言ってのけた。

「自分を何様だと思ってんだ?お前はこの学園の王様ですか?それは小さな国の王様ですね。お前に王子様なんて言われると血管が切れそうだよ。俺はお前の全部が嫌いだ。高慢な態度も、荒々しい行動も、単純な思考回路も、下半身の緩さを一つのステータスと考えている所も。なのに、仕事はしっかりとこなして、外面で一般生徒を誑かして人望を集めている所は、さすが会長様って感じだな。」


言葉の暴力が俺の心を容赦なく抉る。もう、俺ぎりぎりなんだよ。分かるだろ。とっくに限界なんだよ。お前に言われるだけで死にそうに辛いんだよ。

「何とか言えよ。王様?」


俺は、お前が好きなだけなのに。


「…は?」


目の機能が壊れたように涙がとめどなく溢れた。小町の前でなんか泣きたくなかったのに、思わず眉間に皺が寄ってしまう。鼻からも涙が流れているのか、粘着度の薄い液体が流れる。

「…鷹。」

初めて、小町が俺の名前を呼称してくれた気がする。

小町は見たこともないような間抜け面を晒していた。俺はそんな小町が珍しくてぎこちなく笑った。だけど、笑った途端、更に悲壮感が増しただけで、唇を戦慄かせて再び泣いた。


 





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