凅y (腹黒副会長×俺様会長)


別にそれ程俺らの仲は良いものでは無かった。むしろ、彼奴。小町 小雪(コマチ コユキ)は俺のことを邪険に扱っているように思える。いつから小町に嫌悪に思われていたかなんて覚えちゃいない。或いは初めから小町は俺を嫌いだったのかも知れない。

小町に直接何か拙い事をした覚えはない。だけど、小町が俺を一瞥するとき、まるで汚物を見たときのようにその美麗な白い小顔を歪める。眉間に皺を集め、綺麗な蒼い瞳は混濁とし、薄い唇を曲げて小さく舌打ちを鳴らす。
俺が一体何をしたと言うのだろうか。小町が顔面を歪める度に、俺は激しい憤りと同時に羞恥で顔に熱を集めた。自身が薄汚れた存在に見えてきて、精神が磨耗する。確かに、俺は生徒会長という確固たる地位を利用してこの学園で好き放題のさばってきた。時には権力を使って自身の我が儘を通してきた。周りの役員も半ば呆れながらも今はそんな俺に適応している。一般生徒たちだって俺の外見の良さに心底心酔していて、異議を唱える者はいない。それに、俺は確かに自分勝手かもしれないが、仕事はちゃんとやっている。やることはやっているのだ。小町に対しては無理難題なんて言った事もない。だから、そんな顔を俺がされる謂われはないのだ。
そういつものように強気で思ってみても、やはり小町に嫌われていると思うと気が滅入る。嫌われていることは明瞭だ。糞っ、俺が一体何したって言うんだ。俺は何も悪くないぞ。…むしろ小町と、繋がらない会話だと分かっていても自ら率先して無意味なコミュニケーションを謀っているんだ。…何でこんなに切ないんだろ。
生徒会室の窓から彼奴と同じ瞳の色の空が一面に広がっている。何だか責められているようで見ていられなかった。上等な樫の木の広い机に突っ伏していると、扉が開く音に驚き、身体がびくりと大きく揺れた。
目の端に鮮やかな金色が移った。小町だ。普段は背筋を真っ直ぐ伸ばし、制服をパリッと着こなす姿も、今は生徒会室に入るなり、若干背中を丸め、ネクタイを緩めだす。これは小町が生徒会に入る時に必ずやる動作だった。そして、外にいるときの爽やかなスマイルは今は微塵もない。いつものように、不機嫌丸出しで顔を曲げた。というのも、俺にはこっちの小町の方が普通であったから。俺に笑った顔なんて彼奴は一度も見せたことない。あぁ…さっきの反応を見られていただろうか。それともそれすらも関心がないのか。勝手に羞恥心が煽られ、顔が発熱し汗が吹き出る。
一方、小町はというと一寸俺の方を見て、やはり苦虫を噛み潰したような顔をした。もう、限界だ。正直にいうと辛い、悲しい。胸が張り裂けそうだ。俺はお前と接する度にギリギリのラインにいたんだ。もう、無理。


「…よぉ、王子様。」

「…」

「おいおい、…この俺が話しかけてんのに無視かよ?」

小町は中央にあるソファに身を沈め、苛ただし気にこちらを睨めつける。一般生徒が見たら驚愕するような態度だ。

「…無視してんじゃねぇよっ」








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