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再びニヤニヤと笑い出した秀緒の周りに、いつの間にか3人の男がいた。おそらく秀緒の舎弟だろう。
「お前、あれだけの事しといて、よく俺の前にのこのこ出て来れたな。馬鹿なのか?」
「…てめーよぉ。さっきから生意気な口利いてんじゃねーよっ。また虐めてやろーか?あ?」
「お前こそ、まだそんなダセー事してる訳?」
「この野郎っ!!」
胸ぐらを掴まれて、片山に引き寄せられる。
「調子乗ってんじゃねーぞっ!!」
クラス中が俺らのやりとりに注目していた。
「おぃ。」
「あぁ”っ!!?」
「離せ。息がくせぇ。」
「…っ!!」
片山は顔を真っ赤にして、俺の頬を殴った。
しかし、俺が片山のフニャパンでよろける事は無く、睨みつける余裕さえあった。
「クソッ…死ねっテメーなんかっ!…山田ぁっ!!来いよっ!!」
片山は、何だか見るからに弱そうな山田くんと舎弟を連れて教室から出ていった。
「…あなたのせいよっ。」
俺の隣から静かに声が響く。前田さんだ。
「何が?」
「山田くんは今アイツらのターゲットなの。…あなたが、片山を怒らしたからっ!山田くん、いつもより酷い目に遭うわ。」
前田さんは勢い良く立ち上がり机を叩いた。
眼鏡の奥の瞳はキラキラ濡れていて綺麗だった。
「止めて来なさいよ。あなたのせいで関係ない人が殴られるのよ。…止めて来なさいよっ!!」
前田さんはよく見ると可愛い顔をしていた。眼鏡をコンタクトにすればいいのに。
「前田いい加減にしろよっ。何で大場君が止めに行くんだよ。意味わかんね。」
「山田を助けたいんならお前が助けに行けよ。大場君を巻き込むな。」
周りにいた女子が今度は前田さんを一気に責め始める。
次第に前田さんの目から雫が落ち始めた。
あぁ…女を泣かせるのは趣味じゃねぇんだよ。
「止めて来ればいい?」
前田さんは声なく頷いた。
「じゃあ、もう泣くな。」
そう言うと、前田さんは溢れてくる涙を一生懸命制服の袖で拭い始めた。
俺は前田さんの手を取り、教室の外に連れ出すと、他の女子がキャーキャー騒いでいた。
前田さんによると、片山達はいつも屋上で山田君をシめるらしい。
案の定、屋上に向かうと片山達の声が聞こえてきた。
「早く、山田君を助けて!」
「ここで待ってろ。」
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