「ひれ伏せ…人間共よ。」




「すまなかった…。」

宮本(この際呼び捨てでいいだろう)は依然と赤面しながら俺の隣を歩いている。

今、俺達は宮本組の教室へ向かっている。

「いえ、こちらこそ無礼を。この学校の風習だとばかり…失礼しました。」


謝罪を口にすると、宮本は俺の顔をじーっと見つめてきた。


「な、何スか?」

「…別に。」


そして、プイッと顔を背けた。

何だか、ご機嫌ナナメらしい。


「ここが俺のクラスだ。俺が呼んだら入って来い。」


素っ気なく告げて、宮本はとっとと自分のクラスに入ってしまった。

宮本はおそらく怒っているのだが、原因が不明だ。


それはさておき。

転入なんて生まれて初めての経験だから凄く緊張する。裂綺羅の奴が大人しくしていればいいが…学校自体が初めてだからどうやら興奮しているようだ。


宮本の呼ぶ声が聞こえた。

意を決して扉を開く。

宮本がいる教壇まで行くと、あちこちから声が上がった。


「転校生。自己紹介を。」


宮本は、名前ですら呼んでくれなくなってしまった。

俺を見つめる視線や声(主に俺をハーフだと騒ぐ声)が凄くて、柄にもなく緊張していると裂綺羅が出てこようとする。



「グァッ…!」

「羽生っ!?どうした!?」


魔族の右手が疼く…!


「や、めろ…裂綺羅っ」

「…?」

「ここは…学校だぞっ、お前何を」


右手を庇いつつ、顔を上げるとクラスメイトがポカーンとしていた。

ヤバい、何とか裂綺羅を鎮めなくては…!

「クッ…ソ!」

「…転校生、自己紹介。」

「あ、ハイ。羽生です。皆よろしく。」


宮本の目が思いのほか怖かった。


「席は鹿山の隣な。一番後ろ。」


俺が自分の席に向かう最中、周りは奇怪な物を見るような目をしていた。


自分の席の隣には赤茶の短髪をした衣服の乱れた生徒がいた。


「…よろしく、鹿山くん。」

「…話掛けんな。キモい。」


うーん、目も合わせてくれない。どうやら怒らせてしまったみたいだ。


ふと、中央の列の斜め前を見ると、茶髪の爽やかそうな奴と目があった。
にっこりと微笑むと、そいつは慌てふためいて目を反らした。



「委員長、転校生に学校の案内を頼む。」


委員長と呼ばれた男は眼鏡のひょろ長い奴だった。








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