(2/7)


紹介が遅れたが俺の名前は支倉 知長(ハセクラ トモナガ)。昔の武将みたいな名前だ。

俺の容姿にも触れた方がいいのだろうか。背丈は標準男性並で、顔は自他共に認める女顔である。小学生までは「女男」と揶揄されてきたが、中学に入ってサッカーを始めてから筋肉もそれなりに付き、多少は男らしくなったかと思われる。高校三年の今まで、数人の女性とも付き合ってきた。ここ数日前に半年程付き合ってきた彼女と別れて現在、自由の身である。自由の身と言ったら反感を買いそうだが、その彼女は束縛が強かった為に付き合っていた間も息苦しさが絶えなかった。そんな俺に一途だった彼女も、最後には他の男に一目惚れして、俺は読み終わった雑誌の如く棄てられてしまった。未練はないのだが、些か不服である。
そのような事はどうでもいいのだ。俺の中では既に過去の出来事なのだから。

境 善教は俺の嫌いな部類の人間である。境を好きな人間なんかこの学校にはいないように思われる。名前負けも良いとこだ。

その境が何故か先月辺りから、クラスも違う俺に懐いているのだ。これは由々しき事態だ。俺は境の友達と云うレッテルを貼られたくはない。強姦魔の友達になりたい奴なんて何処にいると云うのだ。この様な事態になってしまった経緯も不可抗力であった。

いつか渡り廊下を歩いていたら、擦れ違った境に突然名前を聞かれたのだ。


「名前。」

「はぁ?」

「名前、教えてくれよ。」


俺の腕を掴み、境は俯きがちに顔を赤くしていた。

俺はその人物が境だと解ると、病原菌にでも触れたような心地がした。それが、顔にも出ていたのだろうか。


「…名前位いいだろ…教えてくれよ。」


俺には境が泣いているように見えた。別に、それで可哀想だとは思わなかったが。


「支倉。手、離せよ。」

「…支倉。俺、境 善教。」


あまり、境といる所を周りに長く見られたくなかった。当の本人は、相変わらず顔を赤らめたまま笑っていた。

その時、ちょうど当時付き合っていた彼女に呼ばれ、俺は境から離れることができた。境の方も黙って俺の彼女を見つめて、静かにそこから離れた。彼女は境と一緒に居た俺をひどく怒った。境は学校の女子生徒からも嫌われていたのだ。境の行いを反芻して見れば無理もない話である。


 





戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -