償う (女顔×悪男)


或る寂れた町があった。何処かは詳しくは伏せておくが、太陽の光が反射してキラキラと輝いている美しい海が見える町である。小波の音が聞こえてくる穏やかな町である。

そんな町に最近似つかわしくない事件が起きている。事件と呼ぶのには少々語弊があるかも知れない。実際には警察の方に届け出は出ていないく、一部の若者の間で騒がれている事だ。その事件というのが、非常に深刻な問題であった。

境 善教(サカイ ヨシノリ)。この男、まだ18歳の高校生であったが、絵に描いたような醜悪な男だった。笑った顔は卑しさが滲み出て、軽薄な目つきをしていた。

言わずもがな、知恵のない低脳な男だ。

境は俗に不良と呼ばれるものであったが、喧嘩を売られても一切買わない平和的な不良である。平和主義者と言えば聞こえは良いが、境の場合、腕っ節の方がてんで弱かった。体躯も大きく背も高かったが、喧嘩の才能は無かった。境を見た者は一度はその迫力に怯むが、実際には動きが鈍いばかりで痛みにとんと弱い。中学生にさえ負けた事がある位だ。それ以来、境は喧嘩をしない。


境 善教は周りから忌み嫌われていた。彼の調子の良さに周りは、ほとほと呆れ返っていた。仲良く懇意にしていたかと思っていても、危うい局面になると咄嗟に身を翻すような奴であった。そんな事を続けていたせいか、彼に友達と呼べる相手は当然ながら一人もいなかった。周りは彼の言葉など聞き流している。彼は放って置けば一人で永遠と喋り続けているが、誰一人、境 善教を相手にする者はいなかった。

彼を少しでも可哀想だと思ってはいけない。彼は周りの気を引きたいだけなのだ。いつも自分の所業を自慢話の様に吹聴し歩いている。


境 善教は犯罪者だ。

彼は、9人の女性を強姦している。下劣で悪業高いこの行為は、彼の低脳な頭では誇り高きものとして変換される。

普段の彼の発言は戯言であり信憑性もないはずなのだが、こればかりは事実であった。実際に被害者の女性がいたからである。その被害者の女性と云うのも、言葉は悪いが足りなそうな女ばかりであった。態とそのような女を境は選んでいた。そして、あらゆる脅しを彼女たちにかけて、今日まで境はお天道様の下を歩いている訳である。これが穏やかな町を騒がしている事件の真相であった。

境が「あと1人で2桁だ。」と哄笑した日には周りは誰一人、境を視界に入れる事はなかった。








戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -