花の残香
日差しが強い穏やかな昼休み。
ここの学園の生徒は中坊のように騒がしい。
俺と山田は珍しく、いつも混んでいる食堂で昼食をとっていた。
たまには、オバちゃんの塩辛い味付けの飯が食いたくなる。
俺がとんかつ定食、山田がカツカレーを一心不乱にガツガツ食ってると、周りから熱い視線と冷たい視線が同時に注がれる。
「キャーっ!ミッチー男らしいっ」
「トラジ子供みた〜い、可愛い〜!」
「何アイツら汚らしい!これだから一般人は。」
「ふふ、まるで動物だね。」
「顔だけ良くたってね〜?」
まぁた、始まった。別にいいだろ。昼飯くらい好きに食わせてくれよ。
山田を見ると、また勘違いを起こしてアンチの子たちに笑顔で手を振っていた。
俺が山田に向かって、馬鹿野郎と言った途端に、食堂内が耳をつんざくような黄土色の声で揺れた。
俺と山田は思わず耳を塞いだ。
「永井、あれ見ろ。」
山田の言う方向に視線を移すと生徒会の奴らが食堂に入ってきている所だった。
「キャーッッッ!生徒会の皆様〜っ」
「衛様ーーッッ!今日も格好いい!」
「プリンスー!抱いてぇぇっ」
「ただしーッ!抱きたいけど…、その厚い筋肉で俺を抱いてくれぇぇッッッ」
「御手洗くーんッ、こっち向いてぇーっっ!」
奴らの生徒会の面々に向けるセクハラとも言えるこの声援は、まるで俺らの比じゃない。
…あれ?でも黒田がいない。
「一人足りないな。…黒田か。」
山田は俺の方を伺いながら言う。
「…なんだよ。」
俺は山田の言葉に不満げに答えた。
「おい、見ろよ。奴らこっちに向かって来るぞ。」
一団は、こちらにスタスタ歩いて来た。
そして俺ら横をあっさりと通り過ぎ、後ろの席に立ち止まる。
そこは、話題の転校生たちがいる席だった。
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