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「おー、遅かったなぁ…っ!?」
高橋は扉を開けて出迎えたが、俺の顔を見て固まる。
「よぉ」
「どうしたんだっ誰にやられたっ!?」
俺の顔の痣や傷を見て高橋は顔を青くしていた。
「…誰でもいいだろ。」
俺は高橋を片手で押しやって中へ入る。
「言えっ!!俺がぶっ潰しに行くっ」
「うるせぇんだよっ!!てめーは俺の保護者かっ!いいか、これは俺の喧嘩なんだよっ!お前は口出すなっ!」
俺は高橋に向かって怒鳴ると、高橋はビクッと肩を揺らし押し黙った。
「…勘違いすんな、俺が勝ったんだよ。相手は今頃病院だ。」
高橋はそれでも不安げに俺を見つめる。
「…来いよ、手当てしてやるから。」
そう言って俺の腕をとり、居間まで連れて行った。
◆◇◆
「痛くないか?」
「痛いに決まってんだろ。」
痣がある頬に湿布を貼ってもらう。
「もうケンカなんてすんなよ…」
「人のこと言えんのかよ。」
「お前が心配なんだよ…」
高橋は俺の頬をソッと撫でる。
「…男前度が上がっただろ?」
俺がそう言うと高橋の顔が一瞬固まって、その後吹き出した。
「あははははっ…!」
「…ムカつく野郎だな。」
高橋が俺をギュッと抱き締めてくる。
「拗ねんなよっ」
高橋はニコニコと俺に笑いかける。
「…拗ねてねーよっ」
「格好良いよ…瀬戸は。」
急に真剣な声に変わった。
「はいはい、ありがとよ。」
「本当だって。」
「もう、いーよ。」
「…今夜何食べる?」
「餃子」
「やだよ、面倒くせーもん。」
不良がもん、とか言うな。
俺は徐々に高橋の毒に侵されてる…気がする。
「あったけーな高橋。」
「ずっとこうしてようか?」
「いや、それはちょっと…」
高橋は何だか楽しそうだ。
次第に俺も笑顔になっていく。
高橋が楽しいならそれでいい。
多分、全く違う俺らが一緒にいる事に理由はない。
「理由なんて無いんだよな、きっと。」
「何?」
「理由求めてたって、出口なんか見つからない。」
「何言ってんだ、瀬戸?」
「…ただ、俺はお前と居るとすげー楽しい」
「…」
「…それでいいんだよな、きっと。」
俺がそう言うと、高橋に更に力強く抱きしめられた。
「…餃子作ってやるよ。」
そう言って、高橋は湿布が貼ってない方の俺の頬にチュッと柔らかくキスをした。
あぁ、また毒に侵される。
甘い甘い。喉が焼けそうな位に甘い毒に。
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