毒の浸透




自分で言うのも何だけど、俺は高橋に結構好かれていると思う。


決して自惚れでは無く、本気でそのように思うのだ。


あいつは不良。俺と顔を合わす度に傷を作ってくる。

…どこかでケンカでもしているのだろう。


それには敢えて突っこまないけど。



対して、俺は平凡。


力には結構自信あるけど、ケンカなんて一度もしたことがない。


なるべく日陰で平和に暮らしたい。


だけど刺激を知ってしまった日から刺激を求める、俺は浅はかな平凡になり果ててしまった。


そもそも世界が違う。


学校でだって大して一緒に行動しないし、俺だって、なるべく不良とは関わりたくない。

だけど、高橋は何かと俺に構う。


それが凄い不思議で、何でだろ?って、ここんところ毎日思う。

だって、高橋みたいな奴が俺に構うなんて何か理由があるとしか思えない。


「瀬戸、今日俺ん家泊まってけよ。次の日休みだし。」

「…」



何でこいつは俺に構うんだろ。


「聞いてるか?」

「…小林君を誘えばいいだろ。」

「何で俺が小林を誘わなきゃいけないんだよ。」

「…さぁ?」


俺たちは今、学校の帰り道を並んで歩いてる。


…俺らは今、周りからどう見えているんだろ。


不良とそのパシリ?


俺ってパシリに見られてるのかな…嫌だな。




「…お前、俺から少し離れて歩いてくんない?」

「な、何だよ急にっ」

「…いや、何となく。」


俺がそう言うと、高橋はニヤニヤと笑いながら俺に密着してくる。


「ちょっ、離れろって」

「嫌だねっ」


そう言って高橋は俺の肩に腕を回しながら笑いだした。


そう、こんな顔で笑ったりするから困るんだ。


「…重っ」

「うっせーぞ」


…まぁ、パシリに思われてもいいかな、何て思ってしまう。


「…じゃあ、俺一回家帰ってからお前ん家行くよ。」


高橋は細い目を大きく見開いた。


「…あぁ、待ってる。」


そう言って、俺の頬にキスをして腕を放した。


「テメっ…」

「じゃあ、待ってるからなーっ!」


俺が文句を言う前に、高橋は走って行った。


何考えてんだ、アイツっ


前にいた近所のババァたちが俺を見てヒソヒソとしている。


「何見てんだぁっクソババァ!?早く家けぇって晩飯でも作っとけっ!」


…ってメンチ切って叫べたらどんなにいいだろう。

それこそヤンキーだな。


実際の俺は、顔を真っ赤にしてババァたちの横を通り過ぎるだけ。


畜生っ、高橋め。


大体、照れるくらいならすんなっ。顔赤ぇーんだよ、可愛いんだよ畜生。



…あれ、俺ってホモだったっけ?








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