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「…と言う訳だ。誰かこの溜まった手紙やら宿題やらを高橋に届けてやってくれないか?」

帰りのHRでの担任の言葉に、クラスが静まり返る。


「せんせぇーっ」


そんな中で、あのヒス女がこの場に似合わない元気な声つきで手を挙げた。


「吉原、行ってくれるか?」

「じゃなくてっ……高橋君に届けるの、出席番号で前の席の瀬戸君が良いと思いまーすっ」





…あのヒス女めっ。


「行ってくれるか、瀬戸?」

「…俺、高橋君の家知りません。」

「大丈夫大丈夫。先生が地図書くから、それ見て行きなさい。」


ぐっ…。


「じゃあ、高橋の家には瀬戸が行くという事でいいな?では、今日の帰りのHRを終わります。」


…え、マジかよ?


周りはワラワラと霧散していく。



ヒス女がクスクスと俺を見て笑っている。


クソっ。めんどくせぇ…


「瀬戸、ちゃんと行きなさいよ?」


ヒス女が俺の席に座りながら言う。

何だ、この性格悪い女は。


「…わーってるよ。」

「ちょっ…」


俺は一刻も早くこの女から離れたくて席を立った。



担任から手書き地図を貰い、下駄箱で靴を履き替えてると、誰かに肩を叩かれた。


「災難だったな。」


その相手は酒井君だった。


「…あぁ。やられたよ、あのヒス女に。」

「彼女、悪い子じゃないんだけどね。」




…性格も良いなんて反則だ。


「じゃあ、俺行くわ。」


俺はつま先を蹴って靴を履いた。


「ああ、また明日。」

「じゃあな。」




校門に向かうと、そこにクラスの女子とヒス女がいた。


「瀬戸っ!」

「…あぁ?」


俺はヒス女に呼び止められて不機嫌な声を隠しもせずに出す。


「…じゃあね。」


ヒス女は小さな声でそう呟いた。



…この女、どうしたんだ?

もう機嫌直ったのか。気まぐれな奴。



「…ああ。」


俺は無視する訳にもいかず、素っ気なく答えておいた。





◆◇◆





高橋君の家は歩いて15分の所にあった。



古びた木造建ての一軒家だ。


なんか…ボロボロ。表札も汚れててボロボロ。


インターホンないし…。

こんなボロ家に住んでる高橋君って一体…。



俺は純粋に興味が湧いた。



そして、今時珍しいガラス扉を盛大に叩いた。


しかし、誰も出てこない。


留守なら仕方ないと、ポストに手紙を入れて帰ろうとしたらガラッと扉が開いた。


「…誰だ、お前?」


俺はその声に振り返ると目を見開いた。



そこには灰色のスウェットを来たタッパのあるオールバックの奴がいたのだ。


目つきが頗る悪い。

不良だ。ヤンキーだ。


…いや、薄々不良じゃないかとは思っていたけど。


 





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