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少しずついつもの喧騒を取り戻してきた昼休み。
廊下をプラプラ宛もなく歩いていると、前方から噂の人物が歩いてきた。
「(黒田…。)」
黒田も俺に気づくと少しだけ目を見開き、立ち止まった。
黒田は相変わらずの無表情だ。
何を考えているのか全くわからない。
黒田はどこに行こうとしていたのだろうか?
こっちには理事長室があるが…まさか例の件のことで呼び出されたのだろうか。
俺はとにかく黒田の事が気になって仕方なかった。
だから、…つい声を掛けてしまったんだ。
「大丈夫か?」
黒田は無表情を崩さない。
瞳がとてつもなく深く黒い。
…何を考えているんだ?
そして、黒田は目線を俺から逸らし、横を通り過ぎ行ってしまった。
やっと動き出せた俺も、黒田とは反対方向に歩を進める。
初めて話し掛けた。
君からの返事は無かったけど。
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