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どうやら授業開始の鐘が既に鳴っていたらしい。
「教科書を出せ、この俺様の数学の時間だ。」
先生はこめかみに血管を浮している。
蘇我よ、俺様とはこーゆう奴の事を言うんだよ。俺はこんなに理不尽ではないだろ?
そして、身も凍る恐怖の魔の数学が始まり、俺の息子もすっかり縮こまってしまったのだ。
◆◇◆
「今日の授業はキツかったな…」
「特に数学。滅してしまえ。」
俺は顔を歪め、見えない相手に中指を立てた。
全授業を終えた俺達は、揃って机に突っ伏している。
「これから、サッカーなんて…俺大丈夫かなぁ。」
「俺なんか柔道だ。」
「俺は帰って寝るだけ。」
「いいなぁ〜」
「羨ましいなら、進藤も帰宅部になればいいだろっ」
純くんは口を尖らせる。茶色いアヒルみたいだ。
「そうも行かねーのよ…俺、そろそろ行かねーと。」
俺はカバンを持ち、片手を上げて皆に言う。
「おう、頑張れよ柔道部っ」
純くんが笑顔で俺を見送る。
「あ、進藤っ俺も行くわ」
そう言って、蘇我はエナメルを持って立つ。
「じゃあ、またなー」
俺は西田を見ると、たまたま目が合った。
西田は俺と目が合うと恥ずかしそうに目を反らした。
顔が少し赤く見えたのは気のせいではないだろう。
俺は蘇我とグラウンドで別れた。
こいつがサッカーやっている所も見てみたいなぁ。
俺は一人道場へと向かう。
道場の外観は前も見たけど、かなり古びていて、やけに荘厳な味がでている。
「チュースっっ!!!」
道場の扉を勢いまかせに開ける。
中には人が2人居て、俺の声の大きさに驚いて固まっていた。
「う、うちに何か用か…?」
近くにいた黒髪がとりあえず喋ってくれたが、明らかに動揺している。
すると、部長が漸く奥の部屋から現れた。
「お、来たなっ」
部長はニコニコと笑って俺の所まで来る。
やっぱり部長は真面目で優しい部長だ。
だからこそ、昨日の淫らな姿が夢だったんじゃないかって思えてくる。
「2人共聞いてくれっ!新入部員の進藤くんだ!進藤、自己紹介っ」
部長は俺の肩にポンッと手を乗せる。
「…えーと、部長との約束でこの度入部する事になった1年の進藤 要ッス。次期柔道部部長だ。よろしくっ」
俺の発言に部長はギョッと俺を見た。
周りにいる部員も口をポカーンと開けている。
「そこで俺は次期部長としてこの部を新しく作り変えようと思ってる。」
俺の熱い演説に、最早、部長と部員2人は目が点になっている。
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